東北地方を再び津波が襲った。福島県沖を震源とするマグニチュード7・4の地震で、岩手や宮城、福島など太平洋沿岸地域に高さ1メートル前後の津波が押し寄せた。人的な被害が少なく、幸いだったと言えようが、5年8カ月前の東日本大震災では1万8千人以上の死者・行方不明者が出ている。備えは十分か、今回の津波を機にもう一度確認したい。

 気象庁によると、2011年3月の東日本大震災の余震という。福島、茨城、栃木で震度5弱を観測している。

 沿岸住民にとって、身近な人の命を奪った大震災の記憶は生々しいのだろう。行動は早かった。避難指示がすぐに出たこともあるが、大きな揺れで目が覚めると、すぐに避難所や津波の心配がない高台に向かっている。

 テレビのアナウンサーも切迫した声で「すぐに逃げてください」と繰り返した。大震災の教訓を生かす動きが随所に見られた。

 一方で、今後の課題も浮き彫りになった。避難する車で道路が大渋滞となった。そこで立ち往生してしまえば、津波にのみこまれる危険があることは大震災でも明らかになっていたはずだ。

 テレビやラジオで津波の高さや到達時間などの情報をしっかりつかんだ上で、どこに逃げるべきか、また、車を使う方がいいのかを冷静に判断した方が、より安全に避難できるだろう。

 戸惑いを感じたのは福島第2原発3号機で、核燃料プールの冷却水ポンプが自動停止したことだ。地震の揺れでプールの水も揺れ、「水位低下」と計器が検知したことが安全装置である冷却水ポンプの自動停止につながったとみられている。

 冷却水ポンプは核燃料が熱暴走しないように、絶えず水を循環させて温度を保つ。福島の事故はポンプを動かす電源が確保できず、炉心溶融を起こしている。今回の地震では1時間半余りの運転停止で0・2度の温度上昇で収まったというが、最大でも震度5弱ほどの地震でポンプが止まるシステムの脆さに驚きを隠せない。

 どの電力会社も「原発は何重もの安全対策を施している」と繰り返し、安全性を強調するが、想定外のアクシデントは避けられないことを今回のトラブルは再び示した。事故発生を前提とした防災対策や避難計画がどれだけ事前にできているかが、国や電力会社に問われている。

 今回の地震と津波は早朝だったこともあり、東北や関東の公立小中高校や幼稚園約300校が臨時休校の対応をとった。ただ、東日本大震災のように平日の昼間に発生すれば、学校はさらに子どもの安全を見極める対応を迫られる。

 大震災では、宮城県石巻市の大川小の児童74人が津波にのみこまれ、命を落とすという悲劇が起きている。裏山に逃げず、児童と一緒に学校にとどまった教師たちの判断に対し、裁判所は「避難誘導に問題があった」と学校側の責任を認めた。日頃から災害時の対応を考えておくことが求められている。

 私たちは東日本大震災を目の当たりにしており、もう「想定外」という言い訳は許されない。突然訪れた大震災の余震と津波は、備えと心構えを問う警告なのかもしれない。(日高勉)

このエントリーをはてなブックマークに追加