都市計画アドバイザー西村さん

■暮らし密着の多様性重要

 大型商業施設を中核に、この10年あまりで急速に発展した佐賀市兵庫北地区。一方、吸引力の低下から空洞化が進んだ中心市街地でも、身の丈に合った再生を模索する動きが広がりつつある。人口減少社会の中でどのようにまちづくりを進めればよいのか。佐賀市の都市計画アドバイザーを務める市出身の建築家西村浩さん(49)にポイントを聞いた。

■錯覚に陥る

 -連載では、住宅や商業施設が一体となった兵庫北地区の開発を手掛かりに、今後のまちづくりのあり方を探った。兵庫北地区の特性を含めて印象を。

 人口増を前提に、住居や働く場所を中心部から外側に広げていった20世紀型の都市開発の縮図ともいえる。利便性を求めて車社会が発展し、バイパス沿いに大型店や住民が張り付いた。佐賀が特別というわけではなく、全国どこにでもある事例だと思う。

 それゆえに、大規模開発でできたまちは似通っている。「少し居眠りしたら、どこにいるのか分からなくなった」-。そんな錯覚に陥る人もいるのでは。どこで暮らしていても同じものを買って食べたり、見ることができる。この発想は成熟した20世紀の現象、歴史そのものといえる。

■活気を戻す

 -郊外型大型店の進出などにより市域は拡大。中心市街地は空洞化が進み、厳しい状況が続いている。

 にぎわいという“量”で見れば確かにそうだろう。ただ、知ってほしいのは、かつての商店街に戻すことが再生とは限らないということ。中心街で起業した若者が連載で紹介されていたが、消費を伴う物販や飲食ではなく、生産の場所へと変わった側面もある。着実になりわいを続け、暮らしていける状況をつくり出すことが、持続可能なまちづくりといえるのではないだろうか。

 歴史のある古い中心街をどう評価するのかという視点もある。「佐賀らしさ」とは何かを考えたとき、そこに暮らす人たちが、何が正しいかではなく、失ってはいけないものだという答えを導き出すかどうかで目指す未来が見えてくる。

 -人口減少に対応したまちづくりを多くの自治体が模索している。参考例はあるのか。

 地域が真剣に人口減少と向き合い始めたのは最近のことだ。教科書のような成功例はなく、実験や挑戦が続いているのが実態だろう。青森市はコンパクトシティーの先駆けとして注目を集めたが、駅前の再開発ビルはテナントが埋まらず、運営する第三セクターも経営難に陥った。地域に空き店舗が増えている状況を見れば、当然の結果ともいえる。

 地域のパイが小さくなる中で企業もリスクを冒してまで進出すべきか、慎重に見極めている。大型商業施設を誘致して中心街の吸引力を一気に高めようと思いがちになるが、施設が倒れたらまちもこけてしまう。一つの集客装置に頼るまちはもろく、集まる目的がたくさんある多様性こそが強さにつながる。

 -これから10年、20年先のまちづくりを考える上でどんな視点が必要なのか。

 高齢者の交通事故は深刻な問題で、道路の維持さえ困難な時代がすぐそばに来ている。なぜ縮小均衡のまちを目指すのか、住民が自分の問題と受け止めて、官民一体で取り組む環境づくりが欠かせない。

 まちづくりの主体は住民だ。一部の地域に注力するのが難しい行政に頼るのではなく、民間の力で狭い地域に変化を起こす。エリアの価値が上がれば、人は集まる。変化を短期間に感じられる範囲でやっていくのが肝だ。小さな成功体験を積み上げ、できたことを官民で共有しながら一歩ずつ前に進んでいく。時間は掛かるが、それが21世紀型の都市計画だと思っている。

=おわり

 にしむら・ひろし 1967年、佐賀市生まれ。東京大工学部卒、同大大学院工学系研究科修士課程修了。99年に設計事務所「ワークヴィジョンズ」設立。佐賀市呉服元町にシェアオフィスを開設しており、同市の「街なか再生会議」座長、「まちづくり50人委員会」アドバイザーなどを務める。東京都港区在住。

=まちが動いた ゆめタウン佐賀10年=(5)

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