BSL4施設で着用する防護服

 致死率の高い危険な病原体を扱うバイオセーフティーレベル4(BSL4)の研究施設を長崎大に設ける計画を巡り、地元の長崎市と長崎県は設置に協力することで大学側と合意した。国内には現在、患者の検査などを主な目的とするBSL4施設が東京都武蔵村山市に1カ所ある。長崎大に整備されれば、本格的な基礎研究や人材育成を目的とする初めての施設となる。

 大学周辺には民家が多く、設置に反対する住民もいる。今回の協議で地元自治体側は、住民との信頼関係を築いて施設の安全性を確保することを長崎大に要請。長崎大も受け入れた。

 田上富久市長は同日の記者会見で、協力する理由について「平和都市として世界の人々の命を救うことができる。長崎にふさわしい」と述べた。中村法道知事は「感染者の迅速な診断や治療が可能になる」と語った。

 長崎大は、治療法の確立や薬の開発につながる基礎研究と、世界トップレベルの専門家の育成を目的に、医学部がある長崎市街のキャンパスに施設を造る計画。

 周辺住民の安全確保を重視する市や県は、財政面や人員面での支援や事故時の収拾態勢整備などを政府に要請。政府は、17日の関係閣僚会議で「国策」として計画を進める方針を決め、地元自治体の受け入れを後押しした。長崎大は今後、政府と協力しながら2020年度の稼働を目指す。【共同】

 

■治療薬開発に活用

 バイオセーフティーレベル4(BSL4)施設は「感染症制圧に必須の施設」(長崎大の専門家)とされる。エボラウイルスなどの危険な病原体による病気の治療薬やワクチンの開発の研究、病原体を扱う人材の育成を可能にするためだ。

 世界中を人が移動する現代は、未知の感染症が広がり国家的脅威となる恐れもある。政府も危機管理上重要な施設と認め、「国策として進める」と積極的な支援を明確にする。

 取り扱う対象はエボラ出血熱やラッサ熱、マールブルグ熱などの最も危険度の高い病原体。施設には封じ込めのために厳格な機能が求められ、作業者は安全確保のため全身を覆う防護服を着る。

 2014年に西アフリカを中心にエボラ熱が流行し、国内での患者発生に備えてBSL4施設の整備が急務となった。日本企業が開発した抗インフルエンザ薬がエボラ熱に有効である可能性が海外から報告され、取り扱える施設のない国内の専門家が歯がゆい思いをしたこともあった。

 政府は15年、国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)を初めてBSL4施設に指定。ただ地元との調整で「患者の診断や治療に関わる業務」だけが稼働条件となり、病原体を使った本格的な研究はできないままだった。

 熱帯の感染症の研究で実績のある長崎大は、以前から「感染症は世界的な脅威。立ち向かうには複数のBSL4施設で研究を補い合うことが必要」として、設置に向けて地元と協議を続けた。

■ズーム バイオセーフティーレベル4(BSL4)施設 エボラ出血熱など、有効な治療法がなく感染すると致死率が高い危険な病原体を扱う施設。引き起こす病気の重さや治療法の有無で四つに分類された病原体のうち、最も危険なものを扱える。病原体が漏れないよう、実験室は外部より低い気圧に保ち排気フィルターを二重にするなど、厳しい要件がある。政府が現在指定しているのは国立感染症研究所村山庁舎(東京)のみで、感染の疑いがある患者の検査などに目的を特化している。

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