九州新幹線長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発が大幅に遅れている。耐久走行試験の年度内再開を目指していたが、2年前の走行試験で発生した不具合の改善が不十分で、さらに半年ずれ込む。2025年に本格開業できるかは微妙だ。

 そもそも、なぜ開発が難しいのか。直線を高速で安定走行する新幹線車両の構造とカーブをスムーズに走る在来線車両は異なる。FGTは新幹線(幅143・5センチ)と在来線(同106・7センチ)の二つのレール幅に車輪をあわせ、走ることができるが、速度を上げるほど安全性で問題が出てくる。

 2年前の試験で生じた車軸などの摩耗や破損は高速走行での振動が原因だった。以前の改良では遠心力が働くカーブでの脱線リスクが課題で、高速でも曲がりやすいように車軸を調整し、車輪の可動部分を大きくしていた。日本でFGTの研究開発が始まって20年が過ぎたが、直線の高速走行とカーブ走行を兼ね備える難しさに気づかされた形だ。

 国交省は摩耗による部品の傷みやすさを手厚いメンテナンスで補う考えだ。通常の新幹線車両よりも整備費が2・5~3倍かかるというが、JR九州は「採算面で問題」と改善を求めている。

 FGTの最大の長所は大阪直通運転の実現だろう。ただ、最高時速は270キロどまりで「こだま」の285キロにも及ばない。遅い列車が入るとダイヤ編成が難しくなるため、JR西日本は山陽新幹線(新大阪-博多)への乗り入れに難色を示す。高速化を目指そうにも車輪幅の変換装置があり、重さというハンディを背負う。

 一方で、武雄温泉-長崎(66キロ)の新幹線整備は着々と進む。22年度に「新鳥栖-武雄温泉」の特急と新幹線を乗り継ぐリレー方式で暫定開業し、3年後にFGTを投入して全面開業するのが今の計画だ。

 車両開発が遅れることになれば、リレー方式を延々と続けざるを得ない。武雄や嬉野など新幹線駅を持つ自治体だけでなく、利用者からも不満が出るだろう。大阪からの乗客は新鳥栖と武雄温泉の2度、荷物を抱えて乗り換えなければならない。FGT開発をずっと待つのも無理がある。

 すべて新幹線規格で整備すべきという声が県内からも出始めている。全線フル規格化すれば、鹿児島ルート同様に大阪直通運転も確約されるだろう。

 ただ、過去には佐賀県の負担が800億円超という試算がある。佐賀は長崎ほど時間短縮効果がない。国が負担減の約束でもしない限り、のめない要求だ。また、新鳥栖-武雄温泉の新幹線ルートを策定した上で用地買収が必要になる。時間も相当かかるだろう。

 07年に国と県、JR九州が同意して着工が決まったとき、長崎ルートの開業目標は18年だった。大幅な遅ればかりが目立つが、FGT開発の難しさは当時から指摘されていたはずだ。今の混乱はそのような指摘に目を背け、技術が確立しないまま新幹線事業を見切り発車したことが背景にある。

 FGTの長崎ルート導入が可能か否か、国は結論の先延ばしを続けた。地方をこれ以上、混乱させないためにも半年後には明確な判断を示すべきだ。(日高勉)

このエントリーをはてなブックマークに追加