高齢者が運転する車の暴走で、悲惨な死亡事故が相次ぐ。アクセルとブレーキの踏み間違いや、高速道路の逆走など、加齢に伴う判断力の低下が原因とみられるが、認知症を疑われるケースも少なくない。

 東京・立川市の病院で起きた事故では、夫の見舞いに訪れた83歳の女性が運転する乗用車が、歩道を歩いていた2人をはねて死亡させた。横浜市では87歳の男の軽トラックが登校中の小学生の列に突っ込み、児童1人が死亡、6人がけがをした。高速道路の逆走も後を絶たない。

 いかに事故を防ぐか。最優先は認知症対策だろう。

 来年3月からは、75歳以上を対象に免許更新時に合わせて実施している認知機能検査が強化される。この検査で記憶力や判断力が低ければ、医師による診断が義務づけられ、正式に認知症と診断されれば、免許取り消しか停止になる。

 だが、これだけでは間隔の長さが気がかりだ。急速に衰えるケースもあるだろう。免許更新は「3年に1度」であり、この時に限らず、検査の機会をもっと増やすべきではないか。

 免許を返納しやすい環境づくりも欠かせない。たとえマイカーを手放したとしても、高齢者が不便を感じず、安心して暮らせる交通手段が必要だろう。

 ところが、地方では人口減少が進み、バス路線の維持はバス会社にとっても、支援する自治体にとっても大きな負担になっている。採算が取れず、路線の見直しや撤退も広がる。

 こうした実態を踏まえて、法人格を持たない任意団体も有償運送が可能になった。住民が主体になって運営する地域バスも走り始めている。地域の実情に合わせて、公共交通機関を整えていきたい。

 タクシーへの乗り換えも有力な選択肢のひとつ。タクシー運賃を負担に感じてマイカーを手放すのをためらうかもしれないが、車検やガソリン代などの維持費とてんびんにかければ、タクシーが割高とばかりは言えまい。

 加えて、周囲の目を高齢者が気にするという事情もあるようだ。日常的にタクシーを使うと「ぜいたくをしている」と見られるのではないかと、気兼ねしてしまうのだという。

 免許を返納した高齢者を対象に、武雄市や鹿島市などのタクシー会社は2009年から運賃の1割引きを始めている。このサービスを県全域に広げようと、タクシー各社が加盟する協会が来春の導入を目指して検討を続けている。

 割引サービスはタクシー会社にとっては採算を圧迫する要因かもしれないが、社会的な意義は大きい。ぜひとも実現してほしい。

 また、ハンドルを握る高齢ドライバーの安全性をいかに高めるかも課題だ。その鍵を握るのは、日本が誇る技術力だろう。すでに自動車メーカー各社は、追突を防ぐ自動ブレーキを投入している。ブレーキとアクセルの踏み間違いを防ぐ装置も開発されたようだ。いかに普及させるか、次は後押しする施策が求められる。

 超高齢社会に突入し、私たちはマイカーとのつきあい方を見直す時期を迎えた。安全を最優先に、さまざまな社会システムを改善して乗り越えたい。(古賀史生)

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