有明海のノリ漁業者は自衛隊機配備による海の環境変化を心配する=2014年、佐賀市の佐賀空港沖

■「適切措置」も不安拭えず

 政府はオスプレイの配備場所に佐賀空港を選んだ理由の一つに、周辺に住宅地がない「立地の良さ」を挙げている。確かに周りは有明海と農地だが、そこでは大勢の農漁業者たちが生計を立てており、環境への影響を懸念する声は根強い。

 県や県有明海漁協などは農漁業への影響に関し、疑問点や不安点をただす形で防衛省とやりとりを重ねている。ノリ漁業者たちは駐屯地からの排水を不安視しており、「建設工事の排水で海が汚染されないか」「駐屯地に降った雨がそのまま流出して海の塩分濃度が下がり、栄養不足に陥らないか」と尋ねている。

 これに対し、九州防衛局は「周辺環境に影響を及ぼさないよう適切な措置を講じる」と回答した。雨水対策では調整池の設置などを検討しているが、現時点で設置場所は未定。

 オスプレイが発する下降気流がノリや農作物の生育に影響を及ぼすのではないかという危惧には、高度300メートル以上を飛行するので大丈夫だと説明している。

 漁船漁業者たちは騒音の影響を懸念する。特にコノシロ漁は投網で水面付近の群れを狙うため、群れが拡散して漁に支障が出る恐れがあるという。騒音を巡っては、低周波音の家畜への影響を心配する声もあるが、防衛局はいずれも影響はほとんどなく、「万一にも経営上の損失を与えた場合には、関係法令に基づいて補償する」としている。

 ただ、漁業者の中には、国の言葉を信用できないという人が少なくない。諫早湾干拓や筑後大堰(ぜき)など、国は有明海沿岸で公共事業を行う際、「海に影響はない」と説明したにもかかわらず、漁業環境は不安定になったからだ。

 7月の説明会では、諫早湾干拓訴訟の開門の確定判決が実行されていない現状を踏まえ、漁業者から「漁業に影響が出ても、どうせおたくらは被害を認めんのでしょうが」と厳しく追及する声が上がった。

 有明海沿岸の生態系への影響も心配されている。昨年5月、世界的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された東よか干潟(佐賀市)は、シギ・チドリなど渡り鳥の国内有数の渡来地。日本野鳥の会佐賀県支部は影響は分からないとした上で、「多くの鳥が羽を休める夜に訓練があれば、かなりのストレスになるのではないか」と気をもむ。

 佐賀平野の空を彩る熱気球(バルーン)の飛行に支障はないのだろうか。県内の上空には、国内でも珍しい「バルーン・フライト・エリア」があり、佐賀空港の航空機と共存してきた。秋のバルーンフェスタについて防衛省は「自衛隊機の佐賀空港配備後も目達原と同様、期間中はバルーン・フライト・エリアでは飛行しない」と明言する。

 バルーンと軍用機の共存が将来にわたって可能かどうか。佐賀市のバルーンパイロットの男性(35)は「今のフライトエリアは先輩たちに確保してもらったもの。オスプレイが配備されても、自分たちも同じように共存の道を探すしかない」と話す。

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