過労死や過労自殺の要因を探り、根絶するための対策について議論する登壇者=佐賀市の県教育会館

 過労死や過労自殺の要因と対策を探る厚生労働省主催のシンポジウムが26日、佐賀市であり、学識者や労働組合代表者らが意見を交わした。県内の小売店で働き、10年前に過労死した男性=当時(47)=の妻も登壇。市民ら約70人が耳を傾け、長時間労働を受忍してきた労働観を顧み、労働者自らも職場から根絶していく大切さを共有した。

 過労死遺族の妻は、新規出店業務に携わっていた男性の労働時間が1カ月間で140時間に及び、「たまの休みも仕事の電話が鳴りっぱなしだった」と当時の過酷な労働環境を振り返った。男性が亡くなる直前に「会社が大きくなれば、生活が楽になる」と話していたことも明かし、「働き方を見つめ直さない限り、過労死は起こるべくして起こる」と訴えた。

 県職員労組の石橋正純委員長は、毎年約100人の職員が1カ月間で100時間以上残業している実態を説明した。県高教組からは精神疾患で長期休職した教職員が2年連続で50人を超えている実態が報告された。

 熊沢誠・甲南大名誉教授は「日本企業には残業時間の数量的規制はない」と労働行政や法整備の不備に言及した。専門とする労使関係にも触れ、「働き方は労使関係で決まる。残業の例外規定を認めた労働協約を結ぶ労組にも責任がある」と強調した。

 企業の労務管理に関しては「人の配置や働かせ方が過労死の要因だが、企業の専決事項と聖域化され、労組や行政も立ち入れずにいる」と課題を指摘した。複数人の協業から個人での仕事が増えている職場環境の変化も挙げ、「同僚の負担に気づき、過労死を生まない職場にするためには協業性を取り戻すことが重要」と述べた。

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