さまざまな依存症を脱却する手段として、絆や関係性の重要さを学生らに説くヘルスプロモーション推進センターの岩室紳也代表医師=佐賀大鍋島キャンパス

 佐賀大医学部の学祭「医大祭」と同時開催された「第4回AIDS文化フォーラムin佐賀」(5月26、27日)。ヘルスプロモーション推進センターの岩室紳也代表医師は、「依存症の反対は?~ネット依存、薬物依存の共通点を考える~」と題して講演した。内容を詳報する。

 厚木市立病院でエイズ患者を診療し、薬物依存症のプライマリーケアなどの取り組みもしている。

 エイズは、自分の仲間がエイズウイルス(HIV)に感染するまでは「ひとごと」だ。それはなぜか。いま世の中では、有名人の薬物事件などがあるたびにもっともらしい原因が言われるが、本当の原因を突き止めているか。

 13年前、私はいまより12キロ太っていた。ダイエットへのやる気がなかっただけだと切り捨てるのが世の中だが、誰かとつながり、心に響く経験がないときっかけは生まれないものだ。

 若者が抱える生きづらさの一つに薬物の問題がある。「ダメ、絶対」では止められない。根底にあるのは、依存先の不足だからだ。大事なのは、薬物を使ってしまったことを正直に言える場所であり、当事者、援助者同士の「つなぎ」を促進することだ。薬理作用が依存症を生むのではない。依存症の反対はしらふではなく、つながりや絆、居場所だ。

 また中絶やデートDVなど性の問題は、自分のセクシャリティと向き合えていない状態が背景にあることが多い。自殺やいじめ、引きこもりなど心の問題は、客観性や余裕がなくストレスに対処できない問題が根っこにある。ネットいじめやSNSを巡るトラブルから浮かび上がるのは、リアル体験の不足だ。

 性も、心も、薬物も、ネットも、問題は全て「依存」と結びつく。つまり問題の本当の根底は、関係性や自己肯定感、居場所、甘えなどの不足という点でつながっている。コミュニケーション能力の低下も共通する原因だ。

 大切なのは、関わり、つながり、支え続ける環境と複数の居場所だ。居場所がいっぱいある人はトラブルから脱却できる。

 われわれは人なのか。それとも人と人の間に生きている人間という存在なのか。ぜひ考えてほしい。

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