日曜日、子どもがアクション系の映画を見るというので、平行した時間を使ってカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した「万引き家族」を見ることにしました。会場には多くの観客の方が入っていて、佐賀でも認知度と期待度の高さを感じました。しかし、始まって数分後にはこの映画を選んだことを少し後悔していました。メンタルが弱く、つらいもの、悲惨なもの、特に子どもものは苦手なのです。この映画は受賞の華やかさとは裏腹に、貧困、虐待、DV、独居老人、性ビジネスなど、今の世の中が抱える根深い多くの深刻な課題を見る側につきつけてきます。

 日常目にするニュースでは、ショッキングな事件の断片が批判的な目線から報道されることが多いですが、実はそこに至るまでには、生きている人間の生きている時間分の事情や苦しさ、寂しさや、怒り、どうしても守りたかったものなどがぐちゃぐちゃに存在するものなのだろうと考えさせられます。

 子どもも大人も、人には安心していられる居場所が必要だということを感じました。安心していられるということは、衣食住が安定して得られることと同様に、自分のことを無条件に受け止めてくれる人がいるということです。その人は血縁でも血縁でなくても実はいいのだろうと思います。実際に家庭の中で悲惨な状況がエスカレートし、手遅れになってしまう悲劇が後を絶ちません。

 そして貧困や虐待は、予期せぬ妊娠、望まない妊娠がきっかけとなることが多いのです。私たち産婦人科医は望まない妊娠を防ぐ努力をしていく必要がありますし、もし予期せぬ妊娠をしたとしてもそれを機に医療や多職種によるサポートにつなげ、妊娠中出産後子育て中をひとりにしない継続した支援をしていくことが本当に重要で、未来の悲しい家族がうまれるのをみんなで防いでいける社会でありたいと感じています。

 (すこやか女性クリニック院長 西岡智子)

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