ドミナントデザインが確立した18世紀以降の内山(左)と外山(右)の製品の類似

 有田焼創業400年の年も、そろそろ残り1カ月ほどとなった。やはり、産地として400年もの長きにわたって伝統が途切れることなく継承されたことは、極めてすばらしく、誇らしいことである。ただ、当然その間には、何事もなく平穏に伝統の蓄積がなされてきたわけではない。かつては、世界最先端の工業製品の一つとして、今日の産業が直面する課題と同様な、さまざまな難題を乗り越えてきたのである。

 たとえば、磁器のような画期的な素材が創始された当初は、それぞれの業者間で新種の製品開発が競われる、いわゆるプロダクト・イノベーションが活発になる。巨視的には、おおむね17世紀はこの時代であるが、やがて産業として成熟する18世紀になると、古伊万里様式という有田全体の標準的な製品デザインであるドミナントデザインが確立した。すると、プロセス・イノベーションと称される生産の効率化に力が注がれるようになり、生産性は向上するものの、革新的な製品が生まれにくい、生産のジレンマと呼ばれる状態に陥ったのである。

 再びプロダクト・イノベーションの時代が訪れたのは、積極的に西洋の技術を導入した明治時代である。現在は、有田焼創業400年事業などで、海外を含む外部からの情報を積極的に取り入れる機運が盛り上がっている。これを契機として、有田が新たな一歩を踏み出す機会となることを願いたい。

(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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