リフトを使った「抱え上げない介護」を実演する塚原さん(左)=佐賀市の県在宅生活サポートセンター

 介護の質向上と介護職員の腰痛防止につなげようと、県内の理学療法士や介護福祉士ら有志25人がグループをつくり普及啓発を始めた。「抱え上げない介護を県全域に―」。最新の福祉機器を取り入れた実演講習を通じ、県内全体での介護現場の環境改善につなげる。

 グループは「SAGAあたりまえケアネットワーク」。唐津市の宇都宮病院に勤務する塚原大和さん(36)=多久市=が代表を務めている。塚原さんが介護の研修会に参加する中で、先進的な高知県の取り組みに触れ、個人ではなく地域単位で質向上に取り組む必要があると感じるようになった。昨年3月に共感する知人や友人と結成、協力者を増やしながら本年度から本格始動している。

 グループは6月に佐賀市の在宅生活サポートセンター主催の講座で講師を2度務め、抱え上げない介護を実演した。「できるだけ力を加えずに介護することが、利用者も職員も負担が少ない」と塚原さん。リフトだけでなく、専用グローブやシート、ボードを使い、摩擦や人体の構造を利用して高齢者の体を動かす介護技術を紹介した。

 受講者は、介護を受ける立場も経験した。「全然力がいらない」「今まで間違っていたのか」など驚きの声が上がった。使ったことのない福祉機器に触れる参加者も多く、導入費を尋ねる姿もあった。

 人口減社会で、高齢化率は2030年に3割を超えるとの予測がある。介護需要は拡大するが、現場では腰痛による離職者が後を絶たず、人材不足や「老老介護」などの課題に直面している。

 受講した有田町の男性(30)は「自分も腰痛持ち。将来を考えると、介護される人、働く人の両方にとって環境を改善した方がいいと改めて実感した」と感想を話した。

 グループは、7月28日に鳥栖市の緑生館で講習会を開く。「力を入れない介護は、負担が減り、高齢で体力が衰えても続けることができる。多くの人に体験してもらうことで、『3K』とも言われる現場を変えるきっかけにして介護の質の底上げにつなげたい」。本年度は県内5カ所で実演講習を開く考えで、参加を受け付けている。

 拘縮ゼロを目指して活動している佐賀大医学部の松尾清美准教授(社会生活行動支援)も顧問として助言している。「介護の質によっては、利用者のできることが増える。拘縮など2次障害だけでなく、認知症予防にもなり、それが自立や自律につながる」。介護の質の重要性を指摘する。

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