駆け出しの頃、県西部にある農協の部長さんから、「ロッチデールは知っとんね」と尋ねられたことがある。初めて聞くそれは、世界で最初に協同組合ができた英国の小さな都市の名だった◆170年ほど前、織物工の労働者28人が、自発的な助け合いを目指す組合をつくったことに始まる。その運営は公明正大に。「利益は組合員に還元」し、「決定は男女の別なく1票で」などが原則とされた◆政府・与党の農業改革で農協が大揺れした。何しろ政府の改革会議の提言が激辛。JA全農を狙い撃ちし、1年以内の組織や事業の刷新を迫り、改革が進まなければ「第二全農」の設立まで突きつけた。結局は選挙を見据えた自民党内の反発を受けて弱められたが、農協自らの改革が求められる事態に◆農業を取り巻く情勢は厳しい。過疎化に高齢化、担い手不足…。このままでは耕作放棄地はいずれ平坦地(へいたんち)にも及ぼう。それは農家だけでなく消費者の危機でもある。今だからこそ農協の役割は大きいと言いたい◆パリッとスーツを着ているサラリーマンではなく、「農」の心を胸に刻んだ人材が必要とされている。迷った時こそ原点に。農家と手を携え、ロッチデールの精神に立ち戻る。組合員の期待に応えられれば、たとえ国がいろいろ言っても、組合員が強い味方になってくれるに違いない。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加