公害防止協定の覚書付属資料にある自衛隊との共用を否定した一文。下は公害防止協定の第3条の条文。これらの解釈を巡って議論が続いている

■「軍民共用」解釈、議論複雑に

 佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画を巡る議論で、焦点の一つになっているのが「公害防止協定」の取り扱いだ。佐賀空港建設時、設置者である佐賀県と予定地の地権者である地元漁協が取り交わした。排水の水質や航空機騒音、大気汚染など、文字通り公害防止対策に関して細かに取り決めている。

 空港建設計画が浮上した1970年代、漁業環境を揺るがす問題が相次いでいた。有明海沿岸で「第3水俣病」騒動が持ち上がったほか、筑後大堰(ぜき)、六角川河口堰の事業が動きだし、漁業者の不安が極度に高まっていた。

 協定を結ぶ際、これら「環境問題」とともに議論になったのが、「自衛隊との共用」問題だ。地元には「赤字になれば自衛隊に身売りして基地化するのではないか」との懸念があった。県の担当者が残した資料にも「漁業者が最も心配している自衛隊基地化」との一文がある。当時の県のスタンスは「(自衛隊基地に)しない、させない、あり得ない」だったと担当した県OBは証言している。

 そうした事情を踏まえて協定の覚書付属資料に、自衛隊と共用しない考えが明記されている。その一文の後に続く文言が、今回の計画を巡る議論を複雑にしている。「また、このことは協定第3条の『空港の運営変更』にもなることであり、当然に『事前協議』の対象となる」。県は顧問弁護士への相談を根拠に「(自衛隊との共用に関し)事前協議を認める可能性を排除したものではない」との見解を示す。

 弁護士の一人は「自衛隊使用を認める可能性を排除したものではないという読み方が正しい」と回答。もう一人は「事前協議の対象となると読める」としながらも「長い時間の拘束力を考えて締結されていると思われるため、時効だと言えば相手はだまされたと思うだろう」「この問題は法律解釈だけで進めるとよくない問題」とも指摘した。

 「自衛隊との共用否定」について県は「今回の(オスプレイ配備)要請まで、県はこの考えを維持してきた」「要請は重要課題である国防に関することで、責任ある自治体として真摯(しんし)に議論する必要があり、県の考えを見直すのか検討せざるを得ない」とする。

 協定の当事者である県有明海漁協の中でも、協定の解釈に関し意思統一は図れていない。地権者の大半が所属する南川副支所の田中浩人運営委員長は「協定は『自衛隊との共用は絶対にしない』という約束としか読むことはできない。当時を知る先輩たちからもそう聞いてきた」と強調する。

 ただ、徳永重昭組合長ら幹部は県の姿勢に一定の理解を示す。「解釈については内部でいろんな考え方がある」としつつ「解釈に関する県の説明の場で反対意見は出なかった」と言う。

 協定の立会人の立場でもある佐賀市は「空港建設当時の考え方を尊重すべき」とのスタンス。秀島敏行市長は22日の会見で「協定の当事者同士で『共用はやむを得ない』となったときに、市として(計画による)影響を調査する必要性も出てくると思う」と語り、協定の整理が先決と主張している。

=国策と地方 第12章=

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