知的障害者が役員や会員となり活動計画を決める「本人の会」の総会=佐賀市のアバンセ

■仲間づくり余暇の充実 支援の輪拡大目指す

 知的障害者たちでつくる「本人の会」(86人)が、今年で設立10年を迎える。当事者が運営委員を務め、自分たちで社会体験などの活動を企画する。自分の考えを自分の言葉で伝える経験など、小さな「自立」を積み重ねることが、充実感や自信につながっている。一方で、関わる支援者や団体が固定化するなど課題も見えてきた。

 5月13日、佐賀市のアバンセ。総会で会長の松雪聖さん(36)が「第1号議案の説明をお願いします」と進行すると、役員が昨年度の活動を報告した。拍手で承認を得ると、新会長の寺崎真由美さん(39)たち新役員に進行を引き継いだ。

 通称「えがおの会」は、知的障害者の家族たちでつくる「県手をつなぐ育成会」が2009年12月、自己決定の尊重や仲間づくり、福祉事業所の外で過ごす余暇の充実などを目的に設立した。役員は10人で任期2年。障害者自身が主体的に参加し、意見を出し合いながら意思決定する。

 総会で最も活発に意見が出たのは、本年度の社会科見学が議題になった時だった。「製鉄所見学に行きたい」「鉄道車両基地がいいです」「温泉」。次々と手が挙がった。発言に時間がかかる人や、うまく話せない人もいる。周囲は最後まで意見を聞き、「賛成」「いいね」と反応し、書記が白板に書き出した。

 後日、出た意見を役員会でまとめ、事務局が計画を具体化する。昨年度は、歯のケアを勉強したいという意見が出て、歯科医師を招いてブラッシングを学んだり、大牟田市の石炭産業科学館を見学したりした。

 設立当初から関わり、運営をサポートするNPO法人「わかば」(鳥栖市)の小川和哉さん(44)は、この10年で障害者を取り巻く環境の変化を感じている。

 06年に施行された障害者自立支援法に基づき、県内にも自立支援協議会ができた。居住地に近い地域で余暇を過ごす活動の機会が増えているという。役員会など活動拠点は佐賀市のため、県全域からの参加は、送り迎えなど保護者や事業所の協力が不可欠となる。積極的にかかわる事業所が固定化し始めるなど、「会の今後の活動やあり方も課題になってきた」(小川さん)。

 ただ、障害者本人の意思を尊重する会の活動は、ほかでは得がたい経験になっている。寺崎さんは人前で話すことが苦手だったが、役員を経験して変わった。「緊張するけど、頑張ります」。会長を引き受けることにした。

 「『言われたことを上手にやる』ではなく、『下手でもいいから自分で一生懸命やる』という経験を大切にしたい」と小川さん。支援者の自己満足にならないようにするためにはどうすべきか。本人たちと一緒に考えている。

このエントリーをはてなブックマークに追加