増え続けるがん患者。最近、ストレスとの関連が指摘されています。特に、心理的な要因が最も大きいのは35~55歳の年齢層です。2018年1月20日、国立がん研究センターの研究班が「自覚的ストレスが高いと全てのがんで罹患リスクが高くなり、その関連性は男性で強くみられる」ことが証明されました。特に、長期間にわたるストレスがあると、がんにつながる可能性が示唆されます。容易に職場を変更することが困難な日本の現状を鑑みると、長期・慢性ストレスを避けることは難しいかもしれません。

 ある患者(H氏)の例を取り上げてみましょう。職場内の選挙を背景に、誰に投票すべきかなどの葛藤が生じたH氏は、応援活動を始めたその数カ月前頃から、微熱、不眠、不安、体重減少などの症状に悩みました。長引く風邪様症状。放置していましたが、やっと2年後に内科受診。検血では、軽度の貧血があったものの目立った異常はなかったのですが、腹部エコー検査を行った結果、左側腹部に腎臓が2個映し出されました。1個は8センチもする大きな腫瘤。すぐに附属病院に紹介され、全ての検査が済んだ翌日、8時間以上にわたる緊急手術を受けました。平成23年10月の出来事だったと思います(当時53歳、現在60歳)。左腎臓がんでした。転移の可能性も高く、3カ月に1回の造影CT検査が数年間続きました。数年間のうつ状態を経験し、6年後再び選挙の時期が来ました。この時は、静かに結果を見守ったようです。

 H氏は、幸いにも、命をとりとめることができました。一般にストレスとがんの因果関係を結びつけることは非常に難しいと思われますが、自覚的にストレスが大きいと思われる方は、是非、一度、全身の身体検査を受けられることをお勧めします。がんの早期発見につながれば幸いだと思います。

 (佐賀大大学院教授、精神科医、被害者支援ネットワーク佐賀VOISS理事長 佐藤武)

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