ボスニア・ヘルツェゴビナをイメージした着物のデザイン資料を見るスカーカ市長(左)。右端は伊藤嘉一さん、隣は坂本秀之・日本大使=サラエボ市庁舎

26年ぶりに復活したロープウエー。市街地と山頂を結び、平和を取り戻した街を一望できる=サラエボ

 首都サラエボの旧市街にある迎賓用の市庁舎。スカーカ市長は訪問団が唐津から持参した着物のデザイン原案を興味深げに見ながら、「ロープウエーをどこかに入れられませんか。今、一番ホットな話題です」。笑顔で窓の外を指さした。

 市街地を見下ろすトレベビッチ山。内戦前、ロープウエーが運行し、ピクニックなど市民の憩いの場だった。それが一転、サラエボを包囲した武装勢力の陣地となり、住民を狙撃し、ロープウエーは破壊された。

 訪問の6日前、ロープウエーが26年ぶりに復活したばかりだった。内戦中に子ども時代を送った市長にとってロープウエーは復興の象徴であり、「平和を取り戻したサラエボを世界に発信するため、手伝ってもらえればうれしい」と継いだ。

 傍らでやりとりを通訳していた女性がうなずき、双方に笑みを送った。「イピル・イピルの会」現地スタッフのヴァイカさんだ。

 在ボスニア・ヘルツェゴビナ日本大使館に開設前後から勤務し、同会の伊藤嘉一さん(73)登志子さん(73)と出会った。ボスニアの折々の情報を日本に伝え、人脈を生かして市長や政府要人との橋渡しをする。

 桜の樹勢を保つ手入れをはじめ、20年に及ぶ現地活動は両者の信頼と友情によって支えられてきた。

 ヴァイカさんにとって唐津はなじみのある地だ。2016年7月、サラエボの子ども3人を連れて、伊藤登志子さんの郷里唐津を訪れた。未来を担う子ども同士の交流をと、同会がその2年前、平和を願うボスニアの子どもたちの絵画を唐津市役所や大志小で展示したことがきっかけだった。

 唐津訪問はコンクール受賞者への褒美で、3人は大志小の児童たちとゲームに興じ、初めて見る海に歓声を上げた。

 絵画展示は東京でのJICAイベントを皮切りに、被爆地広島、津波被災地気仙沼と、戦争や災害の悲しみを刻む地に広がり、今年から唐津市長賞と教育長賞が設けられた。

 そして2020年東京五輪に向け、参加各国の風土や文化を表現した着物を制作する「KIMONOプロジェクト」。唐津実行委員会は196カ国の中から、ボスニア・ヘルツェゴビナを相手国に選んだ。

 「唐津とボスニアを結ぶ、すごくいいプロジェクト」とヴァイカさん。伊藤さんらがまいた種がまた一つ、花を咲かせようとしている。

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