やはり耐えられなかったか。韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が辞意を表明した。疑惑の責任をとった形だが、国民が見放した以上、時間稼ぎをしても何の意味もなかった。決断は遅すぎたくらいである。北朝鮮への対処、慰安婦問題など日韓の重い荷物も放り投げられてしまった◆ふつうの人生を送ってきた人ではない。母は凶弾に倒れ、父の朴正煕(パクチョンヒ)元大統領も暗殺された。20代半ばだった。その後、大統領府を出る時、世人の心が一夜にして変わるという体験をしている。人を信じさせてくれるのも人だが、人を不信の目でしか見られなくさせるのも人だ。朴氏を見ていて、そんな思いにとらわれる◆「父の最も近くにいた人たちさえ、冷たく心変わりしていく現実は、私にとって衝撃だった」。朴氏は自伝『絶望は私を鍛え、希望は私を動かす』に記す。傍らにいた人々が潮が引くように去っていき、妹、弟とともに歴史の裏道へ消えていくようだったという◆朴氏の本当の悲劇はそこから始まったともいえよう。その心の隙間に入り込んだのが、国政に介入したとされる親友の女性だったようだ。やっと巡り会った人と思えたかもしれないが、国家元首としての一線が足りなかった◆引いていた人の潮は押し寄せてきたが、それは皮肉にも反旗を翻した国民の姿だった。朴氏も目にしていたのだろう。(章)

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