「生きたくても生き続けられない命がある」と生徒たちに語り掛ける大庭茂彌さん=多久高

 飲酒運転による交通事故で、当時大学生の娘を失った福岡県糸島市の大庭茂(しげ)彌(み)さん(71)が15日、多久市の多久高(中島慎一校長、399人)で講演した。「娘の死を無駄にしないために」。加害者を生まない社会の実現を目指し、各地で語り続ける大庭さんの訴えに、生徒たちは静かに耳を傾けた。

 1999年12月、鳥取大の3年生だった次女三弥子さん=当時(21)=の車に、飲酒運転の対向車が中央線をはみ出し、突っ込んだ。友人と3人でクリスマスのイルミネーションを見た帰りだった。同乗していた2人も命を奪われた。

 事故から約20年。盆や命日には毎年、三弥子さんの友人が自宅に訪れる。最近は子ども連れの姿も増えてきたが、「妻や息子の受け止めは自分と違う。語りたくても、語れない思いが今でもある」。遺族の深い心の傷を吐露した。

 法整備による厳罰化の動きを歓迎しつつ、「それに頼るだけでは事故はなくならない」とも。鳥取署から連絡を受け、妻と無言で8時間、車を走らせた当時を振り返り、「事故を起こした加害者の家族や周りの人たちも被害者になる」。飲酒運転の撲滅に向けて、言葉をつないだ。

 講演は「命の大切さを学ぶ教室」として、県警と同校が開いた。2年生の坂見凌さんは「未成年だから関係ないと思わずに、事故をなくすために今、何ができるかを考えたい」と感想を語った。

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