韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(64)が任期満了前に辞任する意向を表明した。疑惑が次々と表面化し、友人や側近たちが逮捕される中で、与党幹部までが離反の考えを示した。このままでは国会の弾劾訴追案が可決し、職務停止という不名誉な事態は避けられないとみて、最後は国民の怒りの声に追い詰められての辞意表明となった。

 朴大統領は一連の不祥事が発覚してから3度目となる国民向けの談話を発表し、「任期短縮を含む進退問題を、国会の決定に委任する」と語った。

 政権移譲に向けて与野党の話し合いがまとまれば、2018年2月までの任期満了を待たずに辞任するということだ。この提案で与党主流派を説得して弾劾手続きの回避を狙ったもので、時間稼ぎがその真意といわれている。

 野党は追及の手を緩める気はないようだ。与党の議員にしても、国民の気持ちがすっかり離れてしまった大統領の説得に応じるだろうか。思惑通りに進むとも考えにくい。

 逮捕された友人や秘書官は、大統領の威光をかさに不正蓄財を働いた罪や、国家の機密情報を漏洩(ろうえい)した罪に問われている。検察は起訴状で「共謀関係にある」と大統領の関与を指摘している。裁判はこれからだが、政治的なダメージはあまりに大きく、早期の辞任は避けられないだろう。

 任期途中での大統領辞任となれば、1987年の民主化以降、初めてだ。ただ、韓国の歴代大統領は79年に暗殺された朴大統領の父朴正熙(パクチョンヒ)をはじめ、多くが不本意な末路をたどっている。不正を問われ、本人または親族、側近が逮捕されることも多かった。あまりに強大な権限のために、利権に群がる者が後を絶たないためだ。

 朴大統領の友人崔順実(チェスンシル)被告も、そこにつけ込んだ一人だった。今回の汚職事件が次の大統領選挙の大きな争点となるだろう。不正の温床を一掃する政治改革を断行し、負の連鎖を断ち切ることがない限り、政治への国民の信頼回復はできない。

 疑惑が発覚し、1カ月が過ぎた。韓国政治の混乱が長期化するようなら、日本にも影響が及んでくる。来月は日中韓の首脳会談を東京で開催する予定だが、朴大統領の訪日はかなり厳しくなったのではないだろうか。

 両国には慰安婦問題がある。昨年の日韓合意で、政府間で最終決着を図った。日本は約束の10億円を拠出しているが、韓国側はソウルの日本大使館前の少女像撤去をまだ実現していない。反日感情は根強いものがある。大統領交代で約束が反故(ほご)にされないかの懸念もある。

 一方で、周囲を見渡せば、北朝鮮は世界各国からの警告を無視し、核ミサイル開発を続けている。東アジアの安全保障の要となる米国は「世界の警官になるつもりはない」と明言するトランプ氏が大統領選を制したことで、安全保障の枠組みがどうなるか、まだ不確かな状況だ。

 このような時こそ、日韓両国の強い連携が必要なはずだろう。韓国政治の混乱は当分続き、日本も見守るしかないが、新体制が発足すれば、関係強化に日本から働きかけたい。韓国の安定が日本だけでなく、東アジアにとっても利益となる。(日高勉)

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