国営諫早湾干拓事業の開門調査を巡る訴訟の和解協議で、国は30日、開門しない代わりに創設を提案している「基金案」の規模を100億円とする最終案を、長崎地裁に提出した。「漁業団体の求める取り組みを実現でき、政府内で調整した最大限の額」とし、10年で使い切る想定での事業内容も例示した。

■漁業者側は反発

 国は和解が成立しなければ「基金の実現は難しい」との考えも示した。案の具体的中身を話し合ってきた沿岸4県の漁業団体は「和解と関係なく実施すべき」とし、訴訟当事者である開門派弁護団も反発しており、なお課題が多い。

 国は最終案で、32の事業項目を例示した。総額100億円を使い切った場合は積み増ししない。網袋によるアサリ稚貝育成の新技術を、現在の10倍に相当する年間10万袋で10年間導入する事業や、タイラギやクルマエビの種苗放流量を現在の700万尾から倍増する事業など、具体的な数字を入れて提案した。

 ただ、国が取り組んできた従来の有明海再生事業のメニューを拡充する内容が大半を占める。農林水産省は「100億円で何かをやれば以前の漁獲量に戻るというのは現実的ではない。これまでの事業成果を発展させるのが基金で、何が漁業の現場で望まれているか、どういった新技術の芽があるかを盛り込んだ」と説明する。

 各県漁業団体が要望していた、潮流を改善する掘削や覆砂などの大規模事業は、通常の公共事業として実現可能性を探る「調査費」を盛り込むにとどめた。

 基金の管理運営に当たる4県と漁業団体で構成する一般社団法人に、国も参加するよう求められたが、法的に支障があるとして、事業内容の審査や技術的な指導で関与するとした。

 農水省は有明海再生関連の事業として毎年、事業費ベースで約40億円以上を投入している。基金案の100億円は和解成立後に予算計上する方針だが、その場合、開門の準備工事費として例年確保してきた約60億円は不要となる。

 長崎地裁は1月、開門しない前提で、国に「開門に代わる規模の漁場環境の改善策」を検討し、開門派に解決金を支払うよう促す内容の和解を勧告した。基金案は改善策に当たり、解決金の協議は進んでいない。

 開門を命じた福岡高裁確定判決を受け、国が開門調査を実施するまで漁業者側に支払う間接強制の「制裁金」は6億5千万円を超えている。

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特集 諫早湾干拓問題

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