前財務事務次官のセクハラ事案を巡る一連の報道で、組織内だけでなく、組織外との関わりの中で起きたセクハラに対する対応の未熟さや、被害者をさらに追い込む発言の数々など、人権問題だと認識できていない社会の現状があぶりだされた。佐賀県内でも相談件数は減少しておらず、「関係を悪くすると仕事に響くから」と相談できずに受けた痛みやつらさを飲みこむ事例もみられる。

  「胸、触らせてよ」。2カ月ほど前、営業職の40代女性=佐賀市=は、取引先の男性に迫られた。拒絶すると、「いいの? おたく、業者でしょ」。足元を見る言葉が重ねられ、路上ではキスを強要された。酒席に同席した10人ほどの男性は、潮が引くように去っていった。

 信頼できる上司はいる。言えば対応してくれるだろう。でも、言えない。「組織を通せば大ごとになる。佐賀のような小さな地域では、すぐに同じ規模の取引先を見つけるのは難しい。関係を悪くすると仕事に響くことが分かっているから…」。受けた痛みやつらさを自身の内に押し込める。

 佐賀新聞社の取材では、多様な業種でセクハラを明かす声が聞かれた。「男性管理職に胸を触られた。同席していた同僚を含め、場が凍った」(40代公務員)、「上司から肩や頭を触られている同僚がいた。その女性は、不快さを表情に浮かべていた」(30代団体職員)-。

 40代自営業の女性は、20代の頃から取引先の男性に触られることが度重なり「これが普通だ、と思っていた」。今でも足を触られたり、ホテルに誘われたりする。笑って受け流すようにしてきたが、最近の報道を見て考えを改めた。「神経が麻痺してたんだろう。もっと、おかしいって言える世の中に」と訴える。

 佐賀労働局雇用環境・均等室によると、2016年度のセクハラ相談は67件、17年度は68件だった。15年度までの統計方法が変更になり、単純な経年変化は比較できないが、相談件数は「減っていない」という。組織内が圧倒的に多いが取引先など外部の人からのセクハラもある。数十年も対策や啓発が進められてきたが、浸透し切れていない現実が浮かび上がる。

 セクハラ被害に関する相談も受けてきた安永恵子弁護士=県弁護士会副会長=は、強制わいせつの被害に遭った女性が男性警察官や社内の調査担当者から「あなたにも落ち度がある」「防ぐことができた」と言われ、落ち込んだとの声がいまだにあるとした上で、「会社の上下関係、営業職などでは企業間の上下関係で、女性が逃げられないという立場を理解しておらず、先入観が抜け切れていない」と指摘する。

 佐賀県DV総合対策センターの原健一所長は「組織内で被害があったらきちんと対応するというコンセンサスが大切で、会社が守るという姿勢を示すことが何より重要」と、今回を契機に組織が意識変革する重要性に触れた。

 セクシュアルハラスメントなどの相談に対応している公的機関は次の通り。

 ■佐賀労働局雇用環境・均等室 0952(32)7167

 ■女性総合相談(アバンセ内) 0952(26)0018

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