社会福祉士による被後見人からの着服を発表し、陳謝する佐賀県社会福祉士会の鍋島恵美子会長(左)ら=佐賀市の県社会福祉会

 公益社団法人「佐賀県社会福祉士会」(鍋島恵美子会長)は26日、同会所属の30代男性=久留米市=が、被後見人ら5人の預貯金口座から2755万円を着服していたと発表した。親族による着服などの事例はこれまでもあるが、専門職の社会福祉士による不正発覚は県内で初めて。同会は、刑事告発の準備を進めている。

 同会によると、男性は昨年11月から今年4月までの間に5人の預金口座から複数回、現金を引き出した。被害に遭った5人は、佐賀、福岡県内の知的障害や認知症のある30~80代の男女。男性は、「運営している障害者施設の資金繰りが悪化し、流用した」などと説明しているという。

 今月17日に被後見人が利用している別の障害者施設から同会に対し、「男性が施設の資金繰りに困っていると聞いたが、大丈夫か」との連絡があり、調べたところ着服が判明した。23日に会側が男性から聞き取りをし、事実関係を大筋で認めたという。

 同会は「法人後見」という形で後見人となっており、男性は6人を担当していた。着服が判明した5人以外に、男性が直接の後見人となる「個人後見」の2人分でも着服の疑いがあるという。

 同会は男性から着服分を回収し、未回収分は会で返済することを検討している。鍋島会長は会見で「この不祥事に関して、被害者、関係者、県民の皆様に心よりおわび申し上げます」と陳謝した。

「人の金、手つけるとは」

 佐賀県社会福祉士会の会員の30代男性は、半年足らずの間に被後見人ら5人の預金口座から約30回現金を引き出していた。専門家からは、チェック体制の甘さを指摘する声もある。同会は、預金口座の分散や貸金庫の利用など、後見人が単独で引き出せる金額を制限することで再発防止につなげる。

 「晴天の霹靂(へきれき)。まさか人のお金に手をつけるとは…」。専門職への信頼を前提としていた制度の根幹を揺るがす事態に、鍋島恵美子会長は終始、ショックを隠しきれない様子で質疑に応じた。

 成年後見人は、知的障害や精神障害、認知症などで判断能力が不十分な人に代わり、印鑑や通帳を預かるなどして財産を管理する。会として「法人後見」を受任している同会では、会員に担当を割り振り、1年ごとに収支報告書や通帳の写しなどを同会を経由して家庭裁判所に提出していた。

 今回、男性が担当した「法人後見」などの6人のうち、被害があったのは5人。昨年11月末に通帳の写しなどを提出した1人分は着服がなかった。それ以前に提出していた5人分は、11月以降に現金が引き出されており、チェックのすき間を突かれた格好だった。今後の対策として、生活費など日常的な経費以外の資産は定額・定期預金として会側で管理するなど、担当者が単独で高額の現金を引き出せない仕組みに変える。

 男性が担当する「個人後見」の2人に関しても着服の疑いがあることから、被後見人に同会の銀行貸金庫の利用を勧めるなどの対応を取る。

 内閣府によると、2016年の成年後見人などによる不正報告件数は全国で502件。このうち専門職による不正は30件だった。日本成年後見法学会副理事長の赤沼康弘弁護士は「(今回は)専門職の信用を裏切る事案。2、3カ月に1回は会側で活動をチェックするなど、着服できる『すき間』をつくらないシステムにする必要がある」と監視体制の甘さを指摘する。

 同会で後見活動している会員は141人で、法人後見、個人後見合わせて377人を担当している。5月1日付で、会員に対し被後見人らの財産目録、通帳などの提出を求め、同様の事案が発生していないか調査する。

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