「貧血」と聞くと、「そうそう、私も貧血がある」と思っている人は多いようです。ところが、患者さんの言う「貧血」は、どうも2種類あるようです。

 一つは、医学的に正しい貧血で、通常は「鉄欠乏性貧血」です。月経のために、毎月、一定量の血液が失われ、それを補うのに十分な鉄分(血液を作る材料の一つ)が不足したために起こる貧血です。

 鉄分はヘモグロビンという赤い色素(タンパク)を構成します。血液が赤いのはそのためです。ヘモグロビンは、赤血球の中に存在し、酸素とくっつき、酸素を全身に行き渡らせる働きをしています。貧血がひどくなった場合は、酸素が身体に行き渡らないため、動いた時の息切れなどが出てきます。

 しかし、通常は自覚症状がなく、ゆっくり進行した場合では、ヘモグロビンが半分以下になっても受診されない人もおられます。通常は、鉄剤を数カ月服用することで改善します。男性や閉経後の女性では、貧血の原因が気になります。胃や腸などから、微量の出血が続いて貧血が起こっていないか、内視鏡で検査することもあります。

 もう一つは、「脳貧血」です。脳に行く血液が、一時的に減少した状態を表現する昔の言葉です。生あくびや冷汗が出たり、立ちくらみや、場合によっては意識を失ったりすることもあります。多くは「起立性低血圧」です。

 これは、座って安静にしていても治りません。なぜなら、座った状態では、頭は心臓よりも上にあるからです。横になって、場合によっては足の下に重ねた座布団を敷き、少し足を上げ、心臓と頭を同じ高さにしていれば、徐々に良くなってきます。一時的な血圧調整の問題で、医学的には「貧血」ではありませんので、ご注意ください。

 (佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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