JR長崎線と佐世保線の分岐駅で、特急列車が停車する肥前山口駅=杵島郡江北町山口

 九州新幹線長崎ルートの整備方針を巡り、国土交通省が3月に示したフル規格の試算で、杵島郡江北町の肥前山口駅が停車駅から外れている。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を導入する従来の計画では停車することになっているが、フル規格になれば他の駅との距離が短く、新幹線駅を設けるのは困難との見解を国交省は示している。停車駅は、新幹線建設に反対していた江北町民の説得材料になってきた経緯があり、反発を呼びそうだ。

 国交省が3月30日に発表した整備方法ごとの検討結果によると、新鳥栖-武雄温泉駅間(約50キロ)で、FGTとミニ新幹線の場合は新鳥栖、佐賀、肥前山口、武雄温泉の4駅を設けている。フル規格は肥前山口を除く3駅になっている。

 今回のフル規格の検討や試算は、現行の計画以前の1985年に旧国鉄が公表したフル規格のルートに基づいて行われた。実際のルートや財源などの具体的な検討は実施していない。

 国交省の担当者は「(国鉄)当時は肥前山口駅に止まる前提はなかった」と説明しつつ、「肥前山口と他の駅の間が十数キロで距離が短い。新幹線で20キロに満たない間に複数の駅を設けるケースはなかなかない」と述べ、フル規格の停車駅設置に否定的な見方を示す。

 長崎ルート建設に伴ってJR九州から経営分離される並行在来線の沿線自治体に該当した江北町は、計画がFGTに変わった後も新幹線に反対の立場を取った。肥前山口駅は長崎線と佐世保線の分岐駅で、特急が停車しており、当時町長だった田中源一氏は「計画はいずれフル規格になる。そうなると肥前山口駅に新幹線は停車せず、特急の利便性が失われる」と訴えた。

 県やJR九州は「フル規格にはならない」「新幹線は停車し、駅の分岐機能は維持される」などと理解を求めた。町民の賛否は割れ、05年11月の住民アンケートでも6割が新幹線を「不要」と回答したが、町議会は翌06年3月に新幹線への同意を決議した。

 今回、フル規格が再び持ち上がったことに関し、田中氏は「新幹線は佐賀のためにならないと多くの人が考えていたからこそ反対を続けられた。その経緯を顧みず、フル規格の話が進んでいるように思える」と指摘する。同意決議の際、町議会副議長だった武富久氏は「江北は『新幹線が止まる町』としてまちづくりができると説明を受けたのに、フル規格になれば話が違う」と問題視する。

 佐賀県は1100億円とされる追加負担などを理由にフル規格に否定的な立場を示している。現職の山田恭輔町長は「計画が今後どうなるか予断を許さないが、既に決着したことを無視してフル規格を求める声が上がるのは疑問だ。今後は県と連携しながら対応していきたい」と話す。

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