古沢岩美「憑曲」(1948年、油彩・画布、151×192センチ、板橋区立美術館蔵)

 「日本のダリ」とも称される古沢岩美(1912~2000年)は鳥栖市出身。16歳で上京し岡田三郎助宅に身を寄せ、本郷絵画研究所で学んだ。穏健な岡田作品とは対照的に、血がしたたるような生々しさで見る者に迫る。

 岡田に代表される日本的アカデミズムを踏襲せず、1936年ごろからアバンギャルドの方向にかじを切った。サルバドール・ダリのシュールレアリスム(超現実主義)などを取り入れ、幻想的なエロスの表現を得意とする。

 第2次世界大戦後、国民の生活は困窮していた。それでも古沢はじめ画家たちはキャンバスに思いをぶつけ、48年には第1回モダン・アートクラブ展を開いた。同展覧会に出展した「憑曲(ひょうきょく)」には、戦争のトラウマ(心的外傷)が色濃くにじむ。苦しみを作品に投影して昇華させる、古沢ならではの芸術観が見て取れる。

 美術シーンで正統派なアカデミズム以外の表現が存在感を増していく流れを語る上で、重要な画家のひとりといえる。

 

 佐賀市の県立博物館・美術館で5月13日まで(月曜も開館)。観覧料は一般・大学生500円、高校生以下、障害手帳を持つ人と介助者1人は無料。

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