伊万里市長選は、5選を目指した塚部芳和氏(68)と新人の深浦弘信氏(62)との事実上の一騎打ちだった。現職に有利に働くとされる投票率の低さ(60・16%)の中で、組織力のある塚部氏が深浦氏に敗れたことは、交代を求めた市民の多さをうかがわせた。

 塚部陣営は多選批判に対し、4期16年の実績を強調して対応した。西九州道の開通や伊万里高校の甲子園出場などアピールできる機会も選挙前に次々と訪れ、陣営側は「運の良さ」に自信を深めていた。

 結果は、選挙戦になった前々回の2010年の得票より約5500票減らした。運動の軸となる後援会組織が若返りできず、足腰が弱っていた。一定の組織票を持つ地元の農政協議会は今回、完全に中立の立場を取った。地元選出の県議3人は、前の選挙戦では陣営幹部を務めたが、今回は、自民党県連と塚部氏の原発に対する考え方の違いから2人は距離を置いた。結果的に、前の選挙戦では約1700人だった出陣式の参加人数は今回、約600人にとどまっていた。

 敗因はほかにも考えられる。陣営は「『多選』という二文字に敗れた」と捉えているが、「慢心」や「緩み」を感じていた市民もいた。深浦氏のところには、教育や福祉の現場から「実情を知ってほしい」という声が次々に届いていた。落選した塚部氏が「敗因はよく分からない」と述べたことが、市民との間に大きな溝ができていたことを表しているのかもしれない。

 深浦氏は「人を大事にする政策を」という訴えとともに、毎朝街頭に立つ姿が口コミで共感を呼び、その輪が日に日に広がった。「得票数を見たとき、本当にありがたかった」と深浦氏。その気持ちを忘れないことを市民は望んでいる。

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