政府の規制改革推進会議が放送改革の検討課題を公表した。政府が先にまとめた内部文書では、番組の政治的公平を定めた放送法4条の撤廃をはじめ、大胆な改革方針を打ち出していたが、ほとんど盛り込まなかった。

 森友、加計学園問題などで安倍政権が揺らぐ中、民放の強い反発に遭い、改革方針を事実上撤回した形だ。推進会議の議論の途中で、拙速にまとめた方針だけに、撤回は当然である。

 内部文書によると、(1)通信と放送の制度を一本化し、放送だけに課せられた放送法4条などの規制を撤廃する(2)放送局のソフト(番組制作)、ハード(伝送設備)部門の分離を徹底する(3)NHKのみ規制を維持し、インターネットによる放送番組の同時配信を認める―ことで、新規参入と競争を促す方針だった。

 この改革が実現した場合、NHK以外の放送は不要になり、民放がネットに移行すれば、空いた放送用電波をオークションで新たに割り当てる、と明記していた。

 放送法4条については、権力による番組介入の口実に使われてきた歴史があり、放送関係者からも廃止論が出ていた。しかし、政治的公平にとどまらず、報道の真実性や公序良俗も定めた4条をなくせば、偏った番組やフェイクニュース、過激な性・暴力表現などが放送に登場する恐れもある。4条撤廃が視聴者のためになるのかどうか、慎重な吟味が必要だ。

 また改革方針は、「AbemaTV」や「ネットフリックス」のようなネット動画配信事業者も、在京キー局や地方局も、制度的には同等に扱い、将来、民放から電波を取り上げる方向を示した。いま家庭にあるテレビが、NHKしか映らなくなるのだとしたら、あまりに乱暴だろう。

 確かに、民放には、低俗と言わざるを得ない番組もある。一方、NHKも、ニュースが官報のようだ、などと批判される。だが、戦後日本のラジオ、テレビは、公共放送NHKと商業放送(民放)の二元体制で発展してきた。

 受信料に支えられ、全国にあまねく番組を届けるNHK。広告収入で成り立ち、原則として都道府県を単位とする、より自由な民放。両者が競合し、互いに補完してこそ、視聴者に多様な情報を提供できるはずだ。

 民放も、大災害の報道や、聴覚障害者向けの字幕放送を行うのはもちろん、きめ細かく中継局を建設して、放送エリアの隅々まで電波が行き渡るよう努力してきた。

 時には商売抜きで、民主主義に不可欠な基本的情報や娯楽を地域に届けているのだ。視聴者から邪魔者扱いされがちなCMも、商品の特性を伝えて消費を喚起し、経済をけん引する重要な役割がある。

 その意味で、NHKだけでなく、民放も公共性の高いマスメディアであることは間違いない。一定の規制を残すことで、こうした公共的メディアを存続させるか。それとも、規制を撤廃して、市場競争に任せるか。あるいは、番組のネット同時配信を容認してNHKを強化するのか、民放とのバランスを考え、むしろ縮小するのか。いずれの問いも、簡単には答えは見つからない。

 政府も業界も仕切り直して、通信と放送が融合する時代のメディアはどうあるべきかを、幅広く議論しなければならない。(共同通信・原真)

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