九州電力玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)の2次系配管で起きた蒸気漏れ。雨水浸透による腐食で配管に穴が空いたとみられ、専門家からは設備の維持管理に対する認識の甘さを指摘する声もある。原発で「想定外」が何をもたらすのか。東京電力福島第1原発事故の教訓が九電の組織に浸透しているとは到底思えない今回のトラブルだといえる。

 蒸気漏れが起きたのは、発電用タービンを回す蒸気を作る水から、余分なガスや酸素を抜く脱気器の配管。水は放射性物質を含まず、安全上の重要度が比較的低い2次系設備で、屋外にある。炭素鋼の配管の外を保温材が覆い、その上を金属製の外装板がカバーしていた。

 雨水が配管と保温材の隙間に入り込み、さびが発生して穴が空いたとみられる。九電は、原発が海に面しているため「さびは発生する」と認識していたが、配管が腐食する事態までは想定していなかった。

 稼働時、配管内には高温高圧の蒸気や水が通るため配管の外側は常に乾燥状態になる。7年3カ月もの長期運転停止という未経験の事態が、関係者の内に「想定外」をもたらしたともいえる。

 だがさびを放置すれば腐食が進むということは誰でも容易に想像できる。「甘く考えていた」という九電の釈明は、一歩間違えば人や環境に取り返しのつかない災厄をもたらす原子力の事業者とは思えない言葉だ。安全上の重要度が比較的低い2次系設備に対する油断があったのではないか。

 一方で九電は蒸気漏れトラブルへの対応の間も、3号機の原子炉は停止せず「臨界」を維持している。配管交換を経て県などの理解が得られれば、すぐにでも発電再開をしたいという思惑も透けて見える。県が設置する原子炉工学などの専門家への意見聴取の場でも、専門家が他の電力会社の取り組みを引き合いに屋内への配管設置や配管の材質変更の余地をただしたが、今後の計画策定時に検討すると答えるにとどめた。

 福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に沿った安全対策で、十分に安全は確保できるとの考えがあるのだろう。経済合理性や費用対効果を重視する企業心理が影を落としている側面もあるかもしれない。ただこうした姿勢で、地元住民や県民の理解や信頼は得られるのか疑問だ。

 何よりも、今回のトラブルに関しては九電から関係自治体への情報伝達に時間がかかった。県や地元玄海町への連絡は、発生後2時間を経過しており、全域が30キロ圏内に含まれる伊万里市は3時間半後となった。山口祥義知事らは早めの第一報の重要性を強調し、不快感を露わにする首長もみられた。それぞれ住民の安全確保や不安解消の責務を担う立場にあるだけに当然の反応だろう。裏返してみれば、九電には住民や県民、関係自治体の不安や懸念に思いを致す努力が欠けていたともいえる。

 こうした想像力の欠如は、長期停止の影響に対しても同様であり、それが「想定外」を生み出した。九電には「想定外」を未然につぶしていく努力を求めたい。さらに言えば、原子力政策を進める国は、こうした事業者の姿勢を監視、チェックする仕組みも考えるべきではないか。(梶原幸司)

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