旧優生保護法(1948~96年)下で障害などを理由に不妊手術が繰り返された問題で、佐賀新聞社は14日までに、佐賀県衛生保健年報などに記録されている数字を集計した。県内で不妊手術を強いられた件数は少なくとも86件に上り、49年から82年にかけて実施されていた。ただ、県優生保護審査会に関する資料は破棄されており、誰が手術されたのか特定できず実態解明が困難な状況もある。

 年報などには52、53年の件数の記録はなかった。

 旧法を巡っては、知的障害を理由に不妊手術を強制されたとして、宮城県の60代女性が国に損害賠償を求め今年1月に提訴するなど、旧法下の不妊手術の問題が注目され実態解明や救済を求める動きが出ている。

 全日本ろうあ連盟は3月、全国の加盟団体に実態調査の協力を依頼した。佐賀県聴覚障害者協会も調査を進めている。同連盟によると、そもそもタブー視されている上、調査対象者を見つけるところから始めるため困難が予想されるという。連盟は「まず実態を把握し、ろう者の被害者にも救済措置が取れるように働きかけていく」としている。

 知的障害者の家族でつくる「県手をつなぐ育成会」の村岡洋会長(65)は「これまで当事者が語ることができなかった問題で、わたしも聞いたことがなかった。声を上げた人たちは勇気がある。国は責任を持って調査し、誠意ある対応を取るべき」と話し、実態解明と被害者救済を求める。

 県視覚障害者団体連合会の森きみ子会長(63)は「県内でも86件あったということに驚きがある。当時から人権意識が変わったことで、暗い歴史に目を向け、向き合っていくことができるようになってきたのでは」と変化を感じている。

 県こども家庭課によると、公文書館を含め全庁的に資料を探したものの、個人が特定できる資料は見つからなかった。医療機関の調査については「国が調査する具体的な方針を待って協力する」としている。これまでに旧法下の不妊手術に関する相談は寄せられていないという。

 

 ■優生保護審査会

 旧優生保護法下で、障害者らに対する不妊手術の適否を審査していた。国の機関委任事務として都道府県知事が設置・運営を担った「都道府県優生保護審査会」と、当時の厚生相が監督する「中央優生保護審査会」があった。委員は役人や医師、裁判官、検察官、民生委員らで構成。都道府県優生保護審査会は、知的障害や精神疾患などを理由に医師が申請した不妊手術の適否を決定した。対象者や親族らは決定に異議がある場合、中央優生保護審査会に再審査を申請することが認められていた。

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