プロジェクトの概要やデザイン素案(左)を見る玉那覇有勝さん=沖縄県読谷村の工房

ノウゼンカズラをモチーフにした玉那覇有勝さん作の琉球紅型着尺(和服地)

 2020年東京五輪に向けた「KIMONOプロジェクト」で唐津が担当するボスニア・ヘルツェゴビナの着物を沖縄・琉球紅型(びんがた)の玉那覇有勝(たまなはゆうしょう)さん(49)が制作することになった。独立をめぐる民族対立で隣人同士が敵対したボスニアと、非戦闘員を巻き込む悲惨な戦場となった沖縄。平穏な日常を破壊する戦争のむごさを知る両地が着物でつながり、非戦と平和の願いを世界へ発信する。

 琉球紅型は型紙を用いる沖縄の伝統的な染織技法。琉球王家の庇護(ひご)の下で発展したが、沖縄戦で多くの職人と貴重な作業道具が失われた。その再興は沖縄の復興そのものだった。玉那覇有勝さんは紅型で初めて人間国宝になった有公(ゆうこう)さん(81)を父に持ち、先人の思いと技法を受け継ぐ。

 市民の寄付で制作に取り組む唐津のプロジェクト実行委員会は昨年12月、市内の小学校が交流を持つ東欧の小国ボスニア・ヘルツェゴビナを相手国に決めた。作者は未定だったが、青と黄が鮮やかな国旗を見た副会長で唐津市の呉服店主、田中勝幸さん(68)が「この発色ができるのは琉球紅型しかない」と提案した。

 田中さんら実行委員会メンバーは3月上旬、沖縄の読谷村に工房を構える有勝さんを訪ね、直談判。ボスニア内戦や唐津との関係を伝えた。有勝さんは注文品を抱える多忙な身ながら、「こんな機会は一生に一度しかない」と快諾した。

 有勝さんは「ともに戦争、内戦の戦禍を乗り越え、歴史を土台に観光で振興を図ろうとしているのも共通している」と語る。10月の完成に向けて図柄を考案中で、佐志小の旧6年生が描いたデザインや唐津焼の伝統文様も加える予定だ。

 プロジェクトは参加196カ国のうち、間もなく100カ国分が完成する。事務局を担当する一般社団法人「イマジン・ワンワールド」(福岡県久留米市)の代表高倉慶応さん(50)は「『世界はきっと、ひとつになれる』というメッセージを発信するプロジェクトにおいて、これほどの理想型はない」と賛辞を送る。

 寄付など問い合わせは唐津商工会議所内の事務局、電話0955(72)5141。

 ■琉球紅型

 琉球王朝時代、婦人の礼装、神事に関する服装として摺(すり)込みの手法で染めたのが起源とされ、その後、中国、東南アジアとの交易の中で各地の技法を取り入れて発展した。「紅」は色全般、「型」はさまざまな模様を表し、沖縄の自然と風土をモチーフに鮮やかな色彩を特徴とする。

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