中国の習近平国家主席は3月、北朝鮮の核問題について、トランプ米大統領と電話協議した際、朝鮮戦争の主要当事国である米中両国と韓国、北朝鮮の4カ国による平和協定の締結を含む「新たな安全保障の枠組み」の構築を提唱した。

 また、習氏は訪中した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と首脳会談を行い、一時悪化した両国関係を修復、金氏から「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」との言葉を引き出すなど影響力を行使し始めた。

 今後の南北、米朝首脳会談を経て、核問題交渉は急速に動きだす可能性もある。北朝鮮と伝統的な友好関係を有する中国は、米朝間、多国間の仲介役として朝鮮半島の非核化のために積極的な役割を果たすべきだ。

 米政府当局者によると、5月下旬か6月にも実施される米朝首脳会談について、北朝鮮は米側に対し、朝鮮半島の非核化を協議する意向を初めて直接伝えてきた。北朝鮮の本気度を示す行動だ。米朝間の事前交渉も水面下で進んでいるもようで、首脳会談の成果に期待したい。

 習氏はトランプ氏との電話会談で、非核化には息の長い取り組みが重要であり、中国が仲介役としての役割を果たすべきだと強調。非核化作業の検証に必要な支援を請け負うとし、平和協定などを提唱した。

 1950年6月に始まった朝鮮戦争では米韓と中朝が戦火を交え、53年7月の休戦協定によって停戦した。

 韓国は非核化と朝鮮戦争の平和協定締結を同時に実現させる一括妥結方式を模索してきた。中国の提唱により「非核化と平和協定」を目標とすることが現実味を帯びてきた。交渉で信頼関係が醸成されれば、米朝の国交樹立も視野に入る。目標をぜひ実現させたい。

 交渉の成否の鍵は、北朝鮮が「米国の軍事的な脅威」が除去されたと認め、非核化に踏み切るかどうかだ。難しい交渉であり、米朝双方に譲歩を促す説得役として中国の役割はとても大切だ。

 中国は2003~08年、核問題に関する南北と日米中ロの6カ国協議の議長国を務めた実績を持つ。北朝鮮と長い国境を接する中国にとって、朝鮮半島の平和と安定は死活的に重要だ。

 今回、韓国の主導で、南北・米朝首脳会談の開催が決まったが、中朝首脳会談をきっかけに中国が前面に出てきたのは、自然な流れといえよう。

 南北・米朝首脳会談を前に関係国の2国間協議も活発化している。中ロ外相会談では、朝鮮半島の緊張緩和を歓迎することを確認。ロ朝外相会談では、プーチン大統領と金氏の首脳会談の可能性に言及した。

 近く行われる日米首脳会談や日中外相会談でも北朝鮮問題は中心的な議題となる。日本は拉致問題の解決を要求している。在韓を含む在外米軍の再編は地域の軍事バランスに大きな影響を与え、各国の関心は高い。

 6カ国協議は約5年の交渉の結果、非核化の検証方法で対立が解けず、北朝鮮の核開発継続を許し、失敗した。南北・米朝首脳会談の後で始まる可能性がある交渉も長期化が予想される。

 中国は米朝や朝鮮戦争4カ国だけでなく、日ロを含む6カ国の枠組みで、全体の利益に配慮して粘り強く仲介役を務め、地域と世界の平和と安定に寄与してほしい。(共同通信・森保裕)

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