黒くさび、直径約1センチの穴が空いているのが確認された空気抜き管(九州電力提供)

 九州電力玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)で発生した2次系配管からの蒸気漏れ。九電幹部が「目が届かなかった」と認めるように、7年以上の長期停止による設備への影響の精査は不十分で、通常の点検では異変の兆候を見抜けなかった。専門家からは「安全上重要な設備でない部分は、手間やコストを惜しんだのでは」との指摘がある。

■さび把握も問題視せず

 今回蒸気漏れが発生した脱気器空気抜き管は、発電タービンを回すための蒸気をつくる水からガスなどを除去する設備で、放射性物質を含まない「2次系設備」の一部。屋外にあり、保温材で覆われ、その外側を薄い金属製の外装板でカバーしていた。

 配管に穴が空いた原因は、雨水が配管の隙間に入り込んでさびが発生し、腐食したためと考えられている。運転時は、高温高圧の水や蒸気が通るため配管や保温材は乾燥し、腐食という事態は「想定外」だった。

 こうした事情もあってか、従来の点検では配管の外側よりも内側のすり減り具合を重視して確認していた。2007年2月の確認時は、配管の厚みから耐用年数にあたる「余寿命」を47年と評価し、今回の蒸気漏れ後の点検でも内側の異常は確認されなかった。

 配管設備は、重要度に応じてクラス1~3に分類して点検、補修方法を定めている。蒸気漏れが起きた配管は、一番重要度が低いクラス3と見られる。3月25日の発電再開後は出力を上げるたびに確認するなど点検頻度を増やしたが、「目視確認」にとどまっていた。担当者は配管を覆う外装板のさびを把握していたが、配管の機能が損なわれると判断していなかった。

■「大したことない」と軽視?

 元東芝・原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は「安全上重要でなく、さびを確認しても『大したことはない』と思って運転に入ったのでは」と他の設備よりも軽視されていた可能性を指摘。「安全対策に巨費をつぎ込んだため、再稼働に突き進むしかないという事情もあったのだろう」と背景を推し量る。

 山元春義取締役も5日、報道陣の取材に対し、「メインの施設は繰り返し点検したが、屋外の2次系の設備には目が届かなかった」と不備を認めた。

 約7年3カ月もの長期停止の影響に関する精査が十分だったかも問われる。15年に4年3カ月ぶりに再稼働した川内原発1号機(鹿児島県)でも、再稼働から9日後に復水器内の冷却用配管に穴が空き、海水が漏れ出るトラブルが起きた。

 後藤氏は、高浜原発(福井県)でも再稼働後のトラブルが起きていることを挙げて「規制委も事業者の言い分を聞くだけでなく、長期停止明けの特別点検を策定、指示すべきだ」と国の責任にも言及する。

 九電は10日までに問題の配管などを新品に交換したが、配管の材質は従来と同じ。原発が再稼働した他の電力会社の例を見ると、関西電力ではより腐食に強い「ステンレス鋼」を採用しているほか、四国電力は脱気器を屋内に置いており雨水の影響から守っている。

 点検の頻度や方法などのソフト面のほか、ハード面でもさらなる改善の余地を残す中、佐賀県が意見を聴取する専門家からはどんな「提案」がなされるのか注目される。

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