学校法人・加計(かけ)学園の獣医学部新設計画を巡って、2015年4月に愛媛県や今治市の職員が官邸で安倍晋三首相の当時の秘書官に面会した際のやりとりを記録した文書が明るみに出た。昨年、野党は官邸訪問の事実関係を追及。秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は「会った記憶はない」とし、内閣府も「承知していない」とした。

 学園理事長は首相の友人。今治市が国家戦略特区に指定される8カ月余り前の官邸訪問は「加計ありき」で行政がゆがめられたとされる疑惑で大きな焦点だ。文書には「本件は、首相案件」「文科省は反対しないはず」など柳瀬氏の発言があり、愛媛県の中村時広知事は「職員が備忘録として作成した」と述べた。

 柳瀬氏は改めて面会を否定したが、文書は詳細で、県側がうそを書く理由はない。真実はどこにあるのか。森友学園への国有地売却に関する財務省の公文書改ざんや口裏合わせ、防衛省・自衛隊によるイラク派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)などで国会と国民を欺いてきた行政に対する信頼は根底から揺らいでいる。そうした中、加計疑惑が再燃した。

 もはや問題を起こした府省に調査を手掛ける資格はないと言わざるを得ない。獣医学部は開学し、入学式も行われたが、新学部設置を巡り首相官邸の関与など何があったか全容を解明する必要がある。国会は特別委員会を設置するなど速やかに態勢を整えるべきだ。

 国家戦略特区制度の下で加計学園が計画した獣医学部新設を巡っては、特区担当の内閣府が「総理のご意向」などを盾に文部科学省に早期開学を迫った経緯を記録した文科省文書が出てきた。菅義偉官房長官は「怪文書」と取り合わなかったが、文科省の調査で文書の存在が確認され、前文科次官前川喜平氏が国会で首相側近からの働き掛けを具体的に証言した。

 自ら議長を務める特区諮問会議で17年1月に学園が事業者に決定されるまで学部新設計画を知らなかったとした首相答弁にも疑問が投げ掛けられた。理事長の加計孝太郎氏は16年、首相と少なくとも7回、食事やゴルフを共にし、8月の内閣改造後に農相や文科相、地方創生担当相に相次いで面会していたからだ。

 しかし政府はさしたる根拠も示さずに疑惑をことごとく否定。野党の質問に正面から答えようとせず、解明にも背を向け、多くの疑問が手つかずのまま残った。その一つが15年の官邸訪問だ。

 昨年の国会で取り上げられ、首相は記録を確認し「会っていない」と断言。面会したのではないかと追及された柳瀬氏は「記憶にない」「記憶する限り、会っていない」と繰り返した。愛媛県と今治市は訪問の事実を認めたが、面会の相手や内容、さらに学園関係者が同席していたかどうかは明らかにしなかった。

 新たな文書によると、県と市、学園の幹部らが柳瀬氏と内閣府地方創生推進室次長だった藤原豊氏と面談。柳瀬氏は「死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」とし、藤原氏も「かなりチャンスがあると思ってよい」と話した。

 面会の5日後、首相は花見で加計氏と会っている。「仕事の話はしなかった」としたが、それも含め一連の経緯を再検証する必要がある。野党は柳瀬氏の証人喚問を要求している。今度こそ、徹底解明を期待したい。(共同通信・堤秀司)

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