薩長土肥の4県知事によるトークショー。(右から)佐賀県の山口祥義、高知県の尾崎正直、山口県の村岡嗣政、鹿児島県の三反園訓各知事とコーディネーターを務めた佐賀新聞社の中尾清一郎社長=佐賀市の佐賀城本丸歴史館

 肥前さが幕末維新博覧会の開幕に合わせて、「薩長土肥」として日本の近代化を主導した佐賀、鹿児島、山口、高知の4県知事が佐賀市に集い、明治維新150年への思いを語り合った。各県で取り組む維新関連事業や、将来への展望にも触れたトークショーの様子を紹介する。

懐古主義でなく未来志向 佐賀知事 

揺るがぬ志で世界見据え 鹿児島知事

挑戦の歴史子どもたちへ 山口県知事 

大変な時代こそ人のため 高知知事

 

 三反園訓・鹿児島県知事 明治維新博を2年にわたって展開している。西郷隆盛、大久保利通の生家がある川周辺で歴史ロードを整備した。七つのモニュメントに専用アプリを入れたスマホをかざすと、映像がどんどん出てきて近代化への歩みが全て分かる。五代友厚ら19人の若者をイギリスに派遣したことにちなみ、現代の若者を英国へ派遣する人材育成にも取り組んでいる。
 村岡嗣政・山口県知事 2度にわたる長州征伐など県内各地で幕末・維新に関わるさまざまな資産が残っている。点を線でつないで山口を回ってもらう幕末維新回廊を展開していく。メイン会場の一つには維新体験館を整備し、バーチャルリアリティーを使って幕末の長州にタイムスリップをして名場面をたどっていく。山口のさまざまな歴史の魅力、高い志に触れてもらいたい。
 尾崎正直・高知県知事 自由民主主義や貿易立国を抱いた坂本龍馬の系譜を継いで活躍した土佐人がたくさんいる。板垣退助は、江藤新平と一緒に民撰議院設立を建白し、後の議会開設に力を尽くした。「世界の海援隊」の志を継いだのは岩崎弥太郎。彼の後、続々と経済人が高知に出てくる。ジョン万次郎の影響も大変大きい。こうした史実を知ってもらおうと、昨年から「志国高知幕末維新博」を展開している。
 山口祥義・佐賀県知事 薩長土肥に肥前が入っているのはなぜか。軍事力は佐賀が一番強かった。鍋島直正公は「国内でそれ使うのはやめようぜ」というところがあって、逡巡(しゅんじゅん)した。佐賀には技があり、技術者を集めて反射炉を造った。蒸気機関を造ったのも大きかった。
 佐賀のものづくりの気風、人づくりを、われわれはもっと知ってもいいと思う。今回の博覧会で、150年前からつながっているわれわれが、しっかり子どもたちのほうにバトンタッチ、盛り上げていく節目の年にしたい。
 中尾清一郎・佐賀新聞社社長 国持大名の「薩長土」は国としてのまとまりがいい。肥前が複雑なのは、鍋島藩だけが主ではなく、対馬藩の飛び地であるとか、幕府の直轄領もあり、唐津には譜代大名、長崎は黒田藩と佐賀藩が交代で警備をし、すごく入り合っている。その複雑性が、「薩長土」と「肥」の微妙な違和感につながっているが、決してそれはマイナスではないというふうに知事のメッセージは聞こえる。
 よく幕末維新というと「大河ドラマのロケ地になると、観光客が増えてよかろうね」というふうに言われる。鹿児島は大河ドラマが来ることでどれほど恩恵があったのか。
 三反園 大河ドラマでたくさんの方に注目されていることも事実だが、それで鹿児島が元気になるというのは別問題だ。今の時代は明治維新を成し遂げた時と同じように「大変革期」を迎えていると思っている。鹿児島は観光と農業という二大基幹産業があるが、農業一つとってもTPP(環太平洋連携協定)とかEPA(経済連携協定)とかペリーが来たような感じで開国を迫られている。だからこそ、明治維新のような自信と勇気を取り戻し、揺るぎない志をもって対抗していかなければならない。世界を見据えて、どんどんいい物を売りまくって、生き残り策を考えていく。そうした中で、「西郷(せご)どん」が放映されており、この恩恵にも少しあずかりたい。

 

薩長土肥の4県知事によるトークショーに多くの来場者が詰め掛けた=佐賀市の佐賀城本丸歴史館

 中尾 子どもたちにとって郷土の偉人はどんなイメージであるべきと思うか。
 尾崎 (高知市の)桂浜にある銅像まで親父に連れて行かれて、「これが坂本龍馬だ」と聞いたことは覚えている。土佐人は皆そういう記憶を持っているんだろう。志を貫いていけるようになりたいものだなと思う独特の大きな背中。「無名の志士」たちの存在も大きい。掛橋和泉という人は、脱藩していく浪士たちを助けるが、母にとがめられて最終的に自決する。龍馬らが活躍する姿を見ることはなかったが、新時代を切り拓(ひら)くために命懸けで助けた。何故にそういう感覚を持つようになったのか。若い人には考えてもらいたい。今は個人個人も大変な時代。でも、世の中、困っている人のために頑張りたいと思う志を持つことも大事だ。
 中尾 山口県は人材を生み出し、昭和にいたるまで「薩の海軍、長の陸軍」といわれる軍人の系譜もあった。総理大臣も多く輩出している。「郷土の偉人の背中を見る」という尾崎知事の話と違いがあるならばご示唆いただきたい。
 村岡 山口県は安倍総理を含め8人の総理大臣を輩出している。たどっていくと、幕末のときの長州の「国を思う心」が出発点になるのではと思う。吉田松陰先生は国の危機的な状況に対して非常に強い思いを持っていて、何とか日本を守るために若い人へ奮起を促している。死後には久坂玄瑞や高杉晋作が志を継いでいく。長州はかなり暴走もして、藩自体が存亡の危機に追いやられた時期もあった。藩が幕府に従おうとなりかけたところ、高杉晋作が80人で決起をした。薩長土肥の4県には先人たちが大変高い志をもっていろんなことにチャレンジしていった歴史、資産がある。4県切磋琢磨(せっさたくま)して、挑戦をしていく子どもたちをしっかりと育てていきたい。

薩長土肥の4県知事によるトークショー。(手前から)佐賀県の山口祥義、高知県の尾崎正直、山口県の村岡嗣政、鹿児島県の三反園訓各知事=佐賀市の佐賀城本丸歴史館

 中尾 3知事の熱い志を受け、山口知事に佐賀県民の代表としてのコメントをいただきたい。
 山口 博覧会を企画した時に一番悩んだのが、(薩長土の)3県は非常に分かりやすく、イメージもできている。佐賀県民の歴史に対する認識は本当にばらばらで、思いが強い。難しいなと思った。メイン館もどうつくるか悩んだ。徹底的に未来志向でいこうというのが第一。懐古主義では意味がない。
 歴史を考えた時に、唐津藩も対馬藩もいろんな思いがある中で、分かりやすくするにはどうしたらいいかということを考えた。歴史ファンからすると不十分な考察になっているところもあるかと思う。ただ、これは未来につなげるために残したいもののエッセンスを置いたと思ってほしい。「改革なくして伝統なし」。この4県知事は鋭気盛んで、これからの日本をどうすればいいのか意識を持っているメンバーなので、これからも切磋琢磨していきたい。
 中尾 薩長土の3県知事に応援のエールを頂戴して終わりたい。
 三反園 西郷どんの好きな言葉がある。「人生の全てをなげうって、命を懸けて人のため世のために尽くしなさい」。そういった人のため、世のためが鹿児島。皆さまをお待ちしている。
 村岡 萩には佐賀藩の反射炉をスケッチしてつくったものが残っている。佐賀がいかに先進的なことをやっていたのかということを山口に来て知っていただければ。
 尾崎 メインパビリオンに行き、山口知事が何を言いたいのかよく分かった。「幕末の頃から佐賀は最高だった」。4月に志国高知幕末維新博の第2幕が開幕する。ぜひ高知に来て。


三反園訓(みたぞのさとし)・鹿児島県知事(薩摩、西郷隆盛)
村岡嗣政(むらおかつぐまさ)・山口県知事(長州、高杉晋作)
尾崎正直(おざきまさなお)・高知県知事(土佐、坂本龍馬)
山口祥義(やまぐちよしのり)・佐賀県知事(肥前、大隈重信)
▽コーディネーター 中尾清一郎・佐賀新聞社社長(黒子役)
 =カッコ内は幕末時の藩名と各知事がふんした郷土の偉人名

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