8日に告示された神埼市議選には定数と同じ20人が立候補し、初めて無投票で当選者が決まった。佐賀県内では無投票の議員選挙が散見され、人口減を背景にした担い手不足が顕在化している。選挙戦の「洗礼」を受けない無投票当選は、議会構成の偏りや議員の資質低下につながるとの懸念もある。市民からは改めて、定数の見直しや議員報酬の検討を求める声も上がる。

 「普通なら選挙カーの音が鳴り響くのに、きょうは静かだね。当選した人はホッとしてるのかな」。告示から一夜明けた9日午前、市役所を訪れた神埼町の男性(83)は、市議選を皮肉交じりにこう語った。

 前日の告示日。市議選に届け出た立候補者は、選挙戦になるかどうか気をもんでいた。受け付け開始の午前8時半に姿を見せたのは18人。正午すぎに20人目が届け出を終えた。「21人目」の情報も飛び交ったが、誰も現れなかった。

 ある現職市議は「市民の審判を受けて上がったときは感激するけど…」。初めて無投票で当選した複雑な胸の内を口にした。

 新人3人が当選した一方で70代の現職3人が引退する。原信義議員(71)は旧神埼町議時代を含め通算11期のベテラン。2年ほど前に座骨神経痛を患い、年齢も考慮した上で「続けるのは難しい」。廣瀧恒明議長(76)も「体の調子」、山田一明議員(75)も「体力の低下」などで引退する。

 3人とも後継を探したが、難航した。神埼市議の報酬は月額31万円。隣接する佐賀市議の月額55万3千円に比べ約24万円低く、「手取りでは20万円を切る」(ある神埼市議)。県内10市でも最低水準だ。4年に1度は落選するリスクもあり、将来は描きづらい。その上、政治不信で議員には厳しい目が注がれ、「現役世代が挑戦しにくい状況」(原議員)になっている。

 神埼市区長会は昨年7月、市議会に議員定数削減を要望した。議会は改選前には削減しないことを決め、11月に区長会に回答した。

 今回の結果に当時の区長会会長(68)は「選挙戦の洗礼を受けてこその議員ではないか。『選挙戦になるなら出ない』という人が議員になろうとするのは違和感がある」と話す。定数に加え「適正な報酬についても議論し、少数精鋭の議会というのも考えていいのでは」と問題提起する。

 佐賀大経済学部経済法学科の児玉弘准教授(行政法)は「一般質問や予算議案審査など、有権者に代わって行政や公金の使途をチェックする議会は、地方自治、間接民主制にとって不可欠。無投票は、議会構成がいびつになり、有権者の市政への無関心を招く懸念がある」と指摘する。その上で「意欲ある人が待遇や議会日程で断念するケースがあるのが問題で、神埼市に限らず、議員のなり手不足や議会のあり方を考える時期に来ている」と話す。

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