写真家土門拳の『筑豊のこどもたち』が百円で刊行されたのは1960年のこと。貧窮にあえぐ北九州筑豊の炭田地帯に潜り込んで写真を撮り続けた土門の代表的な写真集である◆その中に「弁当を持ってこない子」のタイトルで4枚の写真が収められている。給食などなかったころ、弁当を持って来れなかった子は机に座って、弁当を食べてる子を無視するようにして絵本を見ている。ひもじさをぐっとこらえ、無言で。あの時代、弁当を持っていけなかった子どもの、何とも切ない思いも一緒に見える迫力である◆それから半世紀の時を経て、子どもと食事をめぐる昨今の事情は随分と違ってきたようだが、ひとり親や共働き、経済的な理由などの事情を抱えた子どもたちに、無料または低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で2286カ所あるという。佐賀は11カ所◆「子ども食堂」は、子どもの貧困の視点からばかり考えてしまいそうだが、子どもたちの居場所づくりや見守りの場としての役割もある。そして何より、楽しい食事をしながら大人のやさしさに触れ、自らも人を思いやることの大切さを知ることである◆運営はNPOや個人有志などさまざまだが、こういう奇特な善意の取り組みの悩みはいつも資金繰りである。子育て支援の視点からもっと支援の輪が広がればと思う。(賢)

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