骨盤臓器脱というのは、女性において、出産時のダメージや加齢によって骨盤底筋が弱り、ぼうこうや子宮がおもに腟(産道)から下垂し、ひどくなると腟口から外へ出るようになる病気です。体外に出る形状から「なすび」などとも呼ばれていたと聞きます。このコラムで取り上げるのは4回目になりますが、毎回反響の大きい話題です。長く思い悩む方も多く、数年前からの新聞記事をいくつもストックし、思い切って受診しました、と言われると、まだまだ啓発が足りないと感じます。

 骨盤臓器脱を予防するのに骨盤底筋体操は有効です。これは尿もれや頻尿の予防にもなりますので、すべての女性に、特に経産婦の方にはおすすめしたい運動ですが、骨盤臓器脱が重症になると体操で対処するのは難しいのです。病院では腟内に入れるリングペッサリーという器具や脱腸バンドのような補正下着などで対処を試みますが、それでもうまくいかない場合や患者さんが希望される場合は手術をすすめます。骨盤臓器脱に対する手術は全国で年間約1万件行われており、決して少なくないのです。

 また、ここ数年で手術の方法も変化してきました。今は各種がんに対する手術などにおいて、かなりの術式がロボット支援手術や腹腔鏡手術で行えるようになってきています。骨盤臓器脱も腹腔鏡手術が少しずつ普及しているようですが、ロボット手術や腹腔鏡手術は専用の機械が必要であるのと、脱出のパターンによっては従来の経腟手術(会陰から行う手術)のほうが治療成績がよい場合もあり、日本ではまだまだ経腟手術が広く行われています。

 骨盤臓器脱はがんなどと違い、早期発見早期治療ではなくしかるべき時期に治療を始めるほうがよい結果につながることもあります。手術を希望される方は、どこの施設でどのような手術を行っているかを調べ、より満足度の高い治療へとつなげていくのも一手と思います。(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

このエントリーをはてなブックマークに追加