韓国で巨額の収賄罪などに問われた前大統領、朴槿恵(パク・クネ)被告に対し、ソウル中央地裁は懲役24年、罰金180億ウォン(約18億円)の判決を言い渡した。判決は「大統領権限を乱用し国政を混乱に陥れる不幸が繰り返されないよう、厳重に責任を問わざるを得ない」と厳しく戒めた。

 親友の崔順実(チェ・スンシル)被告と共謀し、大手財閥から多額の資金を提供させ、国政システムを私物化した振る舞いは、一国の指導者として言語道断だ。朴被告が逮捕、起訴に至る過程で、韓国憲政史上初めて大統領職から罷免されたのも当然だろう。

 現在の革新政権、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が保守政権に政治的な報復を加えたとの批判も少なくない。しかし、今回の判決で認定された犯罪事実を見れば説得力に欠ける。

 朴被告の前任者である李明博(イ・ミョンバク)元大統領も収賄容疑で3月に逮捕されたばかりだ。大統領経験者2人が塀の内側にいるという異常な事態になっている。

 これは単純に「権力者による犯罪」に帰結させるだけでは説明できない。2人に共通するのは、強大な大統領権限が私的な利権蓄積につながり、国政を私物化した構図だ。現行の大統領制そのものに制度的な欠陥があると言わざるを得ない。

 朴被告への判決は、いかに韓国大統領が権力の極みにあり、意のままに国政を私物化することも難しくないかということを見せつけた。むしろ、私利私欲に駆られながら、経済を破綻させずに国政運営を続けることができたことの方が驚きだ。

 韓国は昨年、民主化30年の節目を迎えたが、1987年の民主化以降に就任した韓国大統領で、本人や家族、親族が不正蓄財や収賄など権力型犯罪に問われなかった事例は一件もない。保守、革新といったその時々の大統領が抱いていた政治理念とは関係がないのだ。

 韓国の民主主義は転機を迎えている。有権者の直接投票で選出される韓国の大統領が、帝王的な権限を付与されるという制度を見直す改憲論議は、これまでもたびたび議論されてはきたが、具体化には至らなかった。

 文大統領は李元大統領が逮捕された直後、大統領権限を縮小する改憲案を国会に提出した。政権が交代するたびに、前の政権を責め立てる悪循環から脱却しようとする試みとしては評価できる。

 改憲案は、大統領制に関して任期5年で再選禁止の現行憲法を同4年で1回限りの再選可能に変更、大統領の権限縮小なども盛り込んだ。軍事政権から民主化を勝ち取った意義も強調している。

 だが、文大統領の与党は国会では少数派なので、抵抗する保守系を中心とする野党との折衝を含め、改憲までにはかなりの紆余(うよ)曲折が予想される。6月半ばには統一地方選が控えており、改憲案の扱いが政争の具となる懸念もある。

 2人の大統領経験者が同時期に司法の場で罪に問われるというおよそ民主国家としてはあり得ない現実を直視し、真剣な論議をするよう望みたい。

 改憲案には革新的な色彩が強い部分もあり、野党は保守勢力の政治的影響力を排除しようとしているのではないかと警戒、反発を強めている。しかし、強大な大統領権限の見直しは、時代の要請でもある。今回の改憲論議は韓国の民主主義を鍛え、質を向上させる礎となるはずだ。(共同通信・磐村和哉)

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