新人研修でパスタやセロハンテープなどを使ってタワーを作る新入社員ら=佐賀市の木村情報技術

 売り手市場といわれた2018年の新卒者らの入社式に続き、佐賀県内の企業では新人研修が始まっている。社員の資質を高めようと、各企業は通常業務のほか、趣向を凝らしたカリキュラムを組んでいる。近年は若手の離職も目立つため、会話を重視したフォローにも力を入れる。

 IT企業の木村情報技術(佐賀市)の新人研修では基礎的な業務や会社情報を学ぶほか、同期でチームワークを育むレクリエーションを取り入れている。

▽パスタでタワー

 レクリエーションの実施は3年目で、3人1組でパスタとセロハンテープを使ってで制限時間内にタワーを作り、その上にマシュマロを載せて高さを競う。新入社員は数本のパスタを1束にして強度を高めたり、土台を何度も作ったりして高さを出した。同社は「結果を出すことも大切だが、それ以上に同期同士の深い関係づくりが大事」と話す。

 佐賀銀行(佐賀市)では柔軟な発想で挑戦する資質を育んでもらおうと、新入行員が企画するスポーツ大会を初めて開催する。行員の一体感を醸成する狙いもある。我慢強さを身に付けようと、3年ぶりに市内の寺で座禅体験も開く。

 アイ・ケイ・ケイ(伊万里市)は約1週間かけて接客や実務スキル、自社理念の「地域貢献」を学ぶ。担当職種は決まっているが、1カ月かけて営業やウエディングプランナー、料理など各部署を数日ずつ体験していく。同社の人事担当者は「組織全体を見渡すことができ、総合力の高い社員になるはず」と期待を込める。

 同社では離職を防止するために新入社員1人に先輩社員が1人つき、仕事の悩みなどに答える取り組みを行っている。担当者は「同じ道を歩いてきたからこそ何につまずき、苦労しているかが分かる」と話した。

▽日誌義務付け

 佐賀銀行も同様の取り組みをしているほか、入行3カ月間は日誌を書くことを義務付けており、指導員だけではなく先輩、上司、役員がコメントを書いている。人事企画部は「新人をみんなで育てる狙いがある。話を聞くように管理職に伝えている」と強調する。

 中野建設(佐賀市)では離職者が5年に1人いるかいないか。入社式後、新入社員は社長や役員と一緒に昼食を取るのが伝統で、担当者は「上司との距離の近さも離職防止につながっているのでは」と話す。月1回は社長と役員が自身の近況をつづったコラムを全社員にメールで送り、社員との距離を縮めることを心がけている。

 【記者の目】 配属後のフォロー大事

 学生の売り手市場の中、この春、「人材をやっと確保できた」という企業は多いだろう。貴重な戦力。内定後から内定辞退を防ぐための声掛けなどを行い、入社式後も基本業務のほか同期や先輩社員との関係づくりなど幅広い内容の研修を実施している。

 ゲームなど遊びの要素を取り入れた研修もその一つ。新入社員の表情は学生気分が抜けきれないようにも見えるが、各企業が資金と時間を割いて組むそれぞれのカリキュラムには、「まっすぐ伸びてほしい」との期待が込められている。新入社員は、その思いはもちろん、研修期間中も給与が入ることを心にとめてほしい。

 新入社員の悩みは、実際の業務に関わるようになってから出てくる。若手の離職も増える中、県内企業では新入社員と先輩社員がパートナーを組み、相談にのる「メンター制度」が増えつつある。先輩社員が悩みに理解を示し、改善を図る姿勢は新入社員にとって心強く、信頼関係も生まれるだろう。

 私事だが、先輩社員と机を並べて働くようになって3年目を迎えた。抱えた悩みに対し、経験を踏まえた先輩のアドバイスに励まされてきた。人事担当者にとって新入社員を職場に送り出す時期を見計らうのは難しいが、社名を背負って働き始めた後のフォローが重要ではないだろうか。(上田麻美)

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