木材価格の低迷や山間地域の活力の低下などもあって身近な森林の荒廃が続いているが、一方では従来の発想にない、新しい取り組みも広がりを見せている。先進事例を参考に森の魅力を改めて見直し、活用法を考えたい。

 3月に佐賀市の佐賀県林業試験場で開かれた森林空間の活用をテーマにしたシンポジウムには定員の50人を超える人たちが集まった。若い男女の姿も見られ、森林への関心が失われていないことが感じられた。

 このシンポでは四つの事例報告があった。その中から、まず廃園寸前のキャンプ場を現代のおとぎの国風によみがえらせた夫婦の取り組みを紹介したい。

 場所は大分県中津市本耶馬渓町。小説「恩讐の彼方に」の舞台となり、紅葉の景勝地として知られる所だ。ここに夏休み期間中だけ営業する当時町営の荒れ果てたキャンプ場があった。近くに住んでいた田代和徳さん、じゅんこさん夫妻はこのキャンプ場との偶然の出合いから指定管理者になる。

 「ゆったりとした時の流れを感じられる森の空間をつくりたい」と「バルンバルンの森」に改称し、通年営業に変更した。森というキャンバスに絵を描くように、木の上に家がある「ツリーハウス」を建て、バンガロー一棟ずつの内装や看板など細部までこだわり抜いて模様替えし、手作りのアイテムで森を飾った。「非日常」を満喫してもらうために、夜10時以降は携帯電話を切り、星空を眺めて過ごすよう勧めている。

 夫妻の好きなことを森に詰め込んでいくと、それを気に入ってくれる人たちが集まってきた。家族連れが中心だが、森とは縁遠そうなハイヒールにミニスカートの女性らもやってきてSNSで拡散。インスタ映えブームも追い風となり、2002年のオープン初年120人だった来場者は17年に4000人に激増した。今は森の中で結婚式を挙げる「森のウエディング」に可能性を感じている。

 続いて、佐賀市富士町苣木(ちやのき)自治会の取り組みを紹介したい。苣木地区は市中心部から北西へ約15キロの山に囲まれた緑豊かな集落。16世帯約30人が暮らす。住民の多くが65歳以上の高齢者だ。

 ここでは住民が所有する山を、マウンテンバイクの愛好グループに走路として提供する代わりに、草刈りや溝掃除などの山村維持のための労働力を提供してもらい、森林の活用と地域活性化の両方に取り組んでいる。17年8月にはマウンテンバイクのレースが初めて開かれ、九州を中心に選手約70人、観客200人が参集した。ことしも8月に大会を予定している。移住希望の若者も出てきたことがうれしいニュースだ。

 全国的に見れば、自然の中で自由に遊ばせながら生きる力を育む「森のようちえん」と呼ばれる取り組みも広がっている。岡山県境にある鳥取県智頭町では、保育方針に共感し、わが子を通わせようと東京や大阪、愛知などからIターンする人たちがいる。

 地域の鎮守の森を整備して交流拠点にしたり、ストレス社会で疲れた心身を森で癒やしたりする試みもある。まだ見いだせていない森の魅力が多くあるはず。森を楽しむスタンスで、可能性を広げていきたい。(高井誠)

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