西九州道南波多谷口IC-伊万里東府招ICの開通式で通り初めをする物流会社のトラック。開通を地域の活性化にどうつなげるかも問われる=伊万里市南波多町

 伊万里市街地から車で10分の距離にある焼き物の里大川内山。1日に開幕した「春の窯元市」は、初日から大勢の客でにぎわった。「西九州道が近くまで来て、その効果がどう出るか。楽しみですね」。伊万里鍋島焼協同組合の原貴信事務局長(45)が上機嫌に語った。

 前日の31日、西九州自動車道の南波多谷口インターチェンジ(IC)-伊万里東府招IC間が開通した。福岡都市圏からの高速道路が市の中心部まで延び、1時間で移動できるようになった。昨年11月には女山トンネルが開通し、佐賀市とのアクセスも改善。かつて揶揄やゆされたような“陸の孤島”ではなくなった。

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 道路網の整備は人とモノの交流を活発にし、観光浮揚や農畜産物の販路拡大など産業の振興につながるとされる。中でも期待が大きいのが企業立地だ。

 九州4位の貨物取扱量を誇る伊万里港は、アジア貿易の拠点として今後も成長が見込まれ、陸上交通の便が良くなれば魅力は一段と増す。湾を挟んで2カ所ある臨海工業団地はほぼ埋まっており、市は、長崎自動車道からもアクセスしやすい松浦町に新たな工業団地を造る計画を進めている。

 昨年8月には、半導体の材料となるシリコンウエハー大手のSUMCOが、市内の工場に436億円の設備投資をすると発表した。国内外での需要増に対応するためで、例年にない大規模な投資に市企業誘致・商工振興課は「一般的な企業誘致3~5件分の恩恵がある」と強調する。

 市によると、この設備投資に対する固定資産税収は初年度だけで数億円になる見込み。地元に163人(うち正社員99人)の新規雇用も生まれ、市内に100人規模の社員寮が建設される。

 最近の雇用の拡大を反映してか、伊万里市では2016年の転出超過が前年の322人から85人に改善した。それなのに、市民からは「若者の働く場がない」という嘆きが絶えない。

 理由の一つは、市内に事務系の企業が少ないことにある。伊万里市と有田町を管轄するハローワーク伊万里の2月の有効求人倍率(フルタイム)は1・22倍だが、事務系の仕事に限れば0・41倍。「伊万里にホワイトカラーの仕事は公務員か教員か、銀行員しかない」とはよく言われることで、若者と女性の転出を招く要因となっている。

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 市は打開策として、オフィススペースを公費で確保して事務系企業を誘致する事業に取り組む。伊万里駅近くの「一等地」にできた新築ビルで4月から運用を始めたが、入居する企業はまだ決まっていない。

 中心商店街の男性(62)は危機感を募らせる。「伊万里の街からNTT、九州電力、大手保険会社の営業所が次々と撤退し、事務系の仕事は来ないどころか減っている。どうにかして歯止めをかけないと、銀行も閉じるようなことがあれば、本当に手の打ちようがなくなる」

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