伊万里市が改修後に留守家庭児童クラブとして利用する予定の築60年の建物=伊万里市の大坪小学校

 アジア貿易の拠点として成長する港と、ブランド力のある農畜産物や観光資源を持つ伊万里市。西九州自動車道や女山トンネルの整備で都市部とのアクセスが良くなり、産業の活性化への期待が膨らむ。ただ足元では、少子高齢化が進む地域の暮らしをどう守るか、難しい課題に直面している。8日告示、15日投開票の市長選を前に、市政の課題を2回にわたって探る。

  建物の傷みは激しく、所々で外壁が剥がれていた。市の中心部にある大坪小学校。今は物置などに使われている築60年の木造平屋を、市は500万円をかけて改修し、「留守家庭児童クラブ(学童保育)」の場所として利用する。3月の定例市議会で地元の議員が「この建物で子どもたちの安全を担保できるのか」とただした。

 市は4月から、学童保育の対象を3年生までから全学年に拡大する。国の制度化から3年遅れで、県内では伊万里市と佐賀市が対応できずにいた。厳しい財政事情もあって受け入れ体制が整わず、大坪小に関しても「専用施設を建てるのがベストだが、最低限の投資で安全性を守る」方法をとらざるを得なかった。

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 市内の小中学校では学童保育以外でも、他の市町と比べて環境整備の遅れが目立つ。国や県が公表した施設の耐震化、トイレの洋式化、エアコン設置の進捗(しんちょく)率はいずれも県内最低ランク。小中学校で使用する消耗品費の児童生徒1人当たりの金額も低く、保護者側から支援を受けている状況に2年前、議会から「義務教育現場で使用する消耗品は公費で支出するべき」と指摘を受けた。

 子育てや教育環境の充実は、市が直面する人口減少や少子高齢化対策としても重要な施策だ。地域の将来を担う若い世代は、どの市や町が暮らしやすく、子育てしやすいか、インターネットなどを通じて簡単に調べられるようになった。

 市が昨年、18歳以上の市民約1100人に行ったアンケート調査では、重視する政策に「子育て支援」を挙げる人が多く、その割合は「高齢者支援」と同じだった。

 市内で最も過疎高齢化が進む旧産炭地の山代町。区長の井手一雄さん(67)は、出前授業や地域イベントで子どもたちに地元の魅力を伝える活動をしている。「若い人が一度は外に出たがるのはしょうがないから、いつでも帰ってこられるような環境づくりをしておかないと」

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 8年ぶり選挙戦になる見通しの市長選でも、立候補予定者たちの公約に子育てや教育に関する政策が前面に出るようになった。

 ただ、財源をどうするかは見えてこない。財政の健全度を示す2016年度決算での実質公債費比率(収入に対する借入金返済額の割合)は、県内20市町で最も高い16・2%。市域が広く、学校を含む公共施設や社会インフラの維持に今後も多額の支出を迫られる。高齢化で社会保障費も増えていく中、子育てや教育環境の充実にどう取り組むか。リーダーの手腕が問われる。

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