年度替わりは人が動き、気持ちもざわつく。入学、就職、人事異動…。当事者はもちろん、周りの人もいつもと違う高揚感を抱きつつ、それぞれに区切りのコンマを打って新たなスタートである。

 佐賀新聞の編集局も新体制となった。本社では新人2人が記者生活の一歩を踏み出し、支社・支局では武雄、多久・小城、有田の3支社局の記者が交代した。一人一人が目を凝らし、耳を澄ませ、読者のみなさんに届ける日々の紙面作りに取り組んでいく。

 さて、問題はどんな記事を届けるかである。新聞は以前に比べて読まれなくなったといわれ、取り巻く情勢は厳しさを増している。若者の「活字離れ」や情報メディアの変化など、あらがいがたい要因があるのは確かだが、それを理由にするのは作り手として怠慢だろう。社会の変化に対応しながら、これからの紙面作りを探っていきたい。

 ノンフィクション作家の柳田邦男さんの評論に、こんな一文があった。「住民や被害者を単なる対象としてしか見ない『乾いた三人称の視点』から、客観性を考慮しつつも住民や被害者(一、二人称)に寄り添う道を探る『潤いのある二・五人称の視点』に、官僚の意識を転換しなければならない」。これは、国家賠償問題での行政のあり方に対する提言だったが、記者の仕事にもヒントになる指摘ではないかと思う。

 入社以来、「記事は公正、客観的に書け」と指導されてきた。それは記事への信頼を保つために不可欠な要件だが、客観性を意識するあまり、「冷めた第三者の視点」で無味乾燥の記事ばかりを書いてはいないか。

 柳田さんの言う「潤い」は人の思いによって生まれる。喜び、悲しみ、憤り…。「伝えたい」という記者の強い思いがベースになければ、共感は広がらない。

 教育や子育て、医療や介護など、各分野に解決すべき課題があり、それを一つ一つ掘り起こす。少しでも暮らしやすい社会にしようとする意思を持ち、もう半歩、近づいてみる。取材対象の思いとともに、記者の息遣いが伝わる記事が1本、2本と増えていけば、「面白い」「読みたい」と思ってもらえる新聞により近づけるのではないか。

 政治や行政のチェック、潜んでいる社会的な問題、地域を活気づけるイベント、身近な生活情報やネット速報など、記者の仕事に限りはない。地方紙として、佐賀は丸ごと取材対象である。いま、求められているのはどんな記事なのか。半歩近づいた視点を意識しながら、佐賀で暮らす上で「必需品」となる紙面を届ける-。そのための努力と工夫を続けていきたい。

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 前任の澤野善文が編集本部長となり、後任として編集局長を務めることになりました。その時々の思いや編集方針、紙面制作に関わる話題などをつづります。

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