2階には、船の底の形をした船底天井が今も残り、展示スペースとして活用されている。3月下旬まではおひな様が飾られていた=鹿島市浜町

 ふわりとした酒造りの香りが漂う鹿島市浜町の肥前浜宿。昔ながらの建物が多いまちなみの中で、しっくい仕上げの白い大壁がひときわ大きな存在感を放つ「継場(つぎば)」は江戸時代後期にさかのぼる建築とされ、歴史的なまちなみ保存の原点になった。市による修復を経て2003年から公開。観光案内所として活用されている。現存は珍しく、翌年、国登録文化財に指定された。
 浜町は長崎街道・多良往還の宿場町。有明海に面していたため陸路と海路の接点として栄えた。継場は旅人の荷物の集配や輸送を担う施設。ここで10年近くボランティアガイドを務める平古場美津子さん(72)に案内してもらった。
 名残は随所に見られた。入り口にあったのは馬をつなぐ鉄輪。江戸時代に人馬を乗り換える「継立(つぎたて)」が行われたことが分かる。出入り口は上部に収納できる全面摺(す)り上げ戸で土間に荷車を乗り入れられる。「継場は今で言う郵便局の役割も果たしたんですよ。帳場の跡や人足さんが休憩した部屋も残っています」と平古場さん。大きな梁(はり)が連なる骨太な構造など古式な造形が特徴的という。2階へ上ると、梁がむきだしの部屋のほか、舟をひっくり返したような形の「舟底天井」の部屋も。室内には、春の期間限定で飾られたひながほほえみかけていた。
 継場の修復を機に原風景を残していく機運が醸成されたという。06年に一帯は醸造町として初めて国の重要伝統的建造物群地区に選定。近くにある「かやぶき屋根民家群」も同時に選ばれた。近年では16年に日本ユネスコ協会の「未来遺産」に登録。味わい深い情趣を求め観光客数は右肩上がりだ。
 「イベントがある時以外も古い建物を目当てに訪れる人が増えてきた。このまちなみをずっとつないでいくために、それから自分の健康のために、ガイドを続けていきたい」。平古場さんは歴史に思いをはせ、目を細めた。

街道の宿場町で馬や荷物などの中継を行う問屋として江戸時代に建てられた「継場」=鹿島市浜町

 

 
 

 

【ちょっと寄り道】伝統の技詰まった土壁 幸姫酒造

 継場から浜川沿いに歩いて10分。観光酒蔵として蔵を開放する「幸姫(さちひめ)酒造」がある。正月三が日を除きガイドが常駐し、大きな貯蔵タンクを前にこうじ作りなどの工程を学ぶことができる。
 蔵は昨年リニューアルを終えたばかり。外壁はよろい張りに天然塗料の松煙(しょうえん)が用いられ、重厚感のある黒に仕上がっている。内部は土壁で日本の伝統的な技術が詰まっている。
 試飲できるほか、生酒の購入が可能なのも魅力。お酒のほかノンアルコールの「地酒ソフトクリーム」や甘酒も手がける。日本酒ベースの梅酒も人気を集めている。営業時間は午前8時~午後5時。蔵見学の受け付けは午後4時まで。電話0954(63)3708。

 

 「継場」の住所は鹿島市浜町乙2696。JR肥前浜駅から徒歩5分。車は長崎自動車道嬉野インターチェンジで下車、県道41号を鹿島方面へ進んで国道207号に入り、大村方交差点を左折する。数台の駐車スペースがある。

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