近年、日本では教育界や産業界で「配慮」を要請する法的整備が整えられてきました。

 例えば、労働関係における「安全配慮義務」については、2008年に労働契約法において、労働契約上の付随的義務として、当然使用者が義務を負うことが明示されました。具体的には、通常、従業員の働く場所を指定したり、仕事上使用する設備や器具を用意したりするのは従業員側ではなく、会社側。そのため、職場における従業員の安全と健康を守るのは、従業員の自己責任ではなく、会社側がその義務を負うことになります。

 つまり、就業時間内での事故は、すべて会社側の責任が問われるわけで、それを未然に防ぐには、労働安全衛生法に基づく巡視(労働環境の安全性を確認する)および健康診断を受ける義務、適正な労働時間(過重労働を未然に防ぐ)が義務付けられています。また、通常の通勤上の交通事故も含まれます。

 一方、学校では、2016年4月施行の「障害者差別解消法」により、一人一人の困り事に合わせた「合理的配慮」の提供が行政・事業者に義務化されました(国立大学では義務)。特に、発達障害(例えば、自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害など)を持つ学生さんにはあらかじめ診断書を提出し、本人および家族が学校に要請すれば、一人一人の障害のレベルに応じて、学校がその困難・困り感を克服できるように配慮する何らかの対応を要求することができます。

 その配慮に関し、佐賀大学本庄キャンパスでは、教職員に産業医2人、学生には集中支援部門(2人の臨床心理士と事務)が勤務し、さまざまな要求に応じた対応を行っています。この法律が制定される前までは、障害を持っていても自己責任という古い考え方が一般的だったのでしょう。今は社会が進化しています。お互いに配慮しながら、可能な限りの自己実現を目指して前進しているのです。

 (佐賀大学教授・産業医・精神保健指定医 佐藤武)

このエントリーをはてなブックマークに追加