鼠径(そけい)ヘルニアは良性疾患で症状がなければ経過観察ですみますが、不快感や痛みが出たら、手術がおすすめです。腹腔鏡だと日帰り手術も可能です。鼠径ヘルニアの症状や治療法などについて、ひらまつ病院(小城市)の隅健次副院長に聞きました。

男性の4人に1人が発症 痛みや不快感出たら手術

鼠経ヘルニアとは、脱腸のこと

 「鼠径」は足の付け根の部分。「ヘルニア」は、本来あるべきところから臓器や組織が飛び出した状態をいいます。鼠経ヘルニアは、鼠径部の皮膚の下に腸などが飛び出すいわゆる  脱腸 です。大腿ヘルニアなどいくつかある「鼠径部ヘルニア」の中でも一番ポピュラーなものが鼠径ヘルニアです、腹壁が弱くなると発症するリスクが高くなります。特に小腸や大網(胃から垂れ下がっている脂肪の膜)が飛び出す頻度が高く、大腸のほか、女性の場合は卵巣が出てくる場合もあります。

お腹に力を入れることが多い人要注意

鼠径部(太ももに近い下腹部)が膨らみます

 鼠径ヘルニアの発症は、若い人からお年寄りまで幅広い年齢層で見られ、特に男性に多く、4人に1人と言われています。発症するリスクが高い人は、加齢で腹壁が衰えている人、前立腺肥大で排尿のときに腹圧をかける人、力仕事やぜんそく、慢性的なせきなどお腹に力を入れることが多い人です。

初期症状は足の付け根に膨らみ

 最初はお腹に力を入れたときや、寝ているときは出ていなくても、立ったときに足の付け根がぽこっと膨れていることなどで気づく人が多いようです。脱出部分が大きくなると、不快感や痛みが出てきます。

症状なければ経過観察 

 基本的に脱出部分に痛みなどの症状がない場合、経過観察をします。不快感や痛みが出てくると、治療が必要になります。腸がはまり込んで戻らなくなった状態を「腸嵌頓」と言います。腸嵌頓がひどくなると、腸閉塞や腸が腐る腸管壊死、腹膜炎になる場合があり、命の危険を伴う場合もあります。
 そうなる前に、軽い痛みや不快感など症状が軽い段階での手術をおすすめします。治療は手術以外になく、ヘルニアバンドのようなものを装着しても治りません。

腹腔鏡で日帰り手術も可能

二酸化炭素を注入し、お腹を膨らませスペースをつくります。おなかの中の画像をモニターに映しながら手術します

 鼠径ヘルニアの手術は2種類。腹腔鏡手術と開腹手術があります。腹腔鏡手術はお腹に5㍉~1㌢の小さな穴を3カ所開けます。そのうちの一つから腹腔鏡を入れて画像を見ながら手術し、網戸の網のようなメッシュ(人工の膜)で弱い部分を補強します。腹腔鏡手術は特に、ヘルニアがどこから出ているかなどの診断能力に優れています。所要時間は約1時間半。痛みも少なく、日帰りできます。
 お腹の中にひどい癒着が予想される場合は開腹手術になります。切開幅は約5㌢。時間は約1時間です。開腹手術の入院は、若い人なら1泊2日、高齢の場合、4泊5日が目安です。
 鼠経ヘルニアは良性疾患ですが、様子を見て症状が出たら、早期に治療して不快感や痛みを取り除きましょう。また、予防のために適度な運動と禁煙をおすすめします。

【MEMO】

働き盛りを支援、土曜日の手術も可能

 当院では、土曜日にしか受診できない人のために、土曜日の診療体制(内科、消化器外科専門外来)を充実させています。鼠径ヘルニアも土曜日に手術を受け、同日に退院できることや、日曜日に退院し月曜から会社へ出勤ということが可能です。

ひらまつ病院 副院長 医学博士

隅  健次 

 

すみ・けんじ 佐賀医科大学卒業。佐賀医科大学一般・消化器外科教室(現佐賀大学)、佐賀県医療センター好生館などを経て現職。日本内視鏡外科学会技術認定医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医など。

 

 

 
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