草野さんから楽曲を収録したCDを受け取る山田健一さんと政子さん=佐賀市天祐の県立盲学校

 元県立盲学校教諭で歌手の草野洋二さん(59)らが、同校専攻科理療科で学ぶ山田健一さん(71)と、その妻政子さん(68)に歌をプレゼントした。手を携え人生を歩む夫婦への応援歌「おまえに感謝 あなたに乾杯」。曲を収録したCDを手渡された政子さんは「柔らかい歌声に心が揺さぶられた」と声を詰まらせた。

元警察官で有田署長などを務めた健一さんは定年退職後の63歳で緑内障を患い、左目の視力を失った。右目も「霧の中にいるよう」という。今後は2人の時間を満喫しようとしていた矢先の出来事。憔悴(しょうすい)し切った健一さんだったが、「これからは2人で一人前」と献身的に支える政子さんに応え、再び前を向いた。点字や白杖(はくじょう)での歩行を学び、盲学校への進学も果たした。

 政子さんはそうした葛藤と希望の日々を振り返り、思いを作文につづった。作文は昨年11月のオンキヨー世界点字作文コンクール国内部門サポートの部で佳作を受賞。盲学校の資格相談支援部で点字などを教える福田由美子さん(67)は、作文に感銘を受け、いつもユーモアとお互いへの感謝を忘れない夫婦の姿を歌詞に。同校の元教諭で、現在は佐賀市内で鍼灸整骨院の院長を務めながら歌手として活動する草野さんが作曲を手掛け、2人への応援歌ができあがった。

 《父さん父さん 1人じゃないわ 私が一緒にいるじゃない》《君がいるから笑って生きる 貴方(あなた)がいるから頑張れる》

 盲学校であった歌の披露。草野さんが録音した曲に、山田さん夫妻が耳を傾けた。包み込むように穏やかな歌声に、健一さんは指先でリズムを取り、政子さんは歌詞を見つめ、うなずいた。草野さんは「2曲目にはカラオケも入っているので、文化祭ではぜひ夫婦のデュエットを」とリクエスト。夫妻の笑顔を誘った。

 健一さんは4月から最終年次の3年生となる。「無事に卒業できたら国家試験が控えている。資格を取って、地域の老人ホームなどでマッサージのボランティアをしたい」。その傍らで政子さんが優しくほほ笑んだ。

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