Q.夫が数年前に家を出て以来、何の音沙汰もありません。探すためにあらゆる手は尽くしましたが、行方はおろか、生死すら不明です。夫が仮に亡くなってしまっているのであれば、相続の問題もありますし、家には夫名義の車や私物が残されており、その維持や管理も大変です。どうすればいいでしょうか。

 

 A.日本の法律上、人は生まれてから死ぬまでの間、さまざまな権利を受けられる地位を保障されており、基本的に他者からこの地位を侵されることはありません。しかし、不在者の生死不明状態が長期化すると、その者に関係する法律関係を確定することができず、そのために残された者の生活に不都合な結果をもたらす場合があります。

 そこで、一定期間、生死不明となっている者を「死亡」したものとして扱うことで、財産関係や身分関係などの法律関係を確定させる制度があります。これを「失踪宣告制度」といいます。失踪宣告がなされることにより、不在者について相続が開始され、また仮に不在者が婚姻をしていれば、婚姻関係が解消されます。

 失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないとき、あるいは死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、危難が去った後、1年間明らかでないときに、家庭裁判所に申し立てをすることでなされます。申し立てをすることができるのは、失踪宣告をすることについて法律上の利害関係を有する者、例えば配偶者、法定相続人などです。

 失踪宣告を受けた者が生きていた場合や、失踪宣告を行った時期とは違う時期に死亡したことが分かった場合、本人または利害関係人の請求によって、失踪宣告は取り消されます。失踪宣告が取り消されると、失踪宣告は初めからされなかったことになります。すなわち、相続は開始しなかったことになり、婚姻はずっと継続していたことになるのです。

 失踪宣告は死亡扱いという非常手段ですので、取り扱いには十分、気を付けてください。そして、ご家族とのコミュニケーションはまめに取ることをお勧めします。

(弁護士 永江竜之介 唐津市)

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