農業分野にデザインを取り入れ、ブランドイメージにつなげた事例などを紹介するファームステッドの長岡淳一代表=佐賀市のグランデはがくれ

■「旗印」に誇り、自信込め

【講演要旨】

 農商工連携を推進しようと、「佐賀県の農と食を応援する会」(日本政策金融公庫佐賀支店主催)が11月28日、佐賀市で開かれた。講演では、農家や食品加工業者ら約80人を前に、ファームステッド(北海道帯広市)の長岡淳一代表が、自社で手がけたデザインでブランドイメージや生産意欲の向上につなげた事例を紹介。「農業にデザインを取り入れることで自らの商品の強みや使命、誇りを分かりやすく発信できる」と強調した。講演要旨を紹介する。

 北海道の十勝平野の真ん中に位置する帯広市を本拠地に、南は鹿児島まで全国各地で活動している。地方や、農業をはじめとする第1次産業にこそ、デザインを取り入れる必要性があると訴え続けている。

 それは、三つの切実な問題に直面しているからだ。(1)自社製品に自信はあるが、売れない(2)サービスや製品の差別化がしづらく、価格競争に巻き込まれる(3)ブランドデザインの戦略をどうすればいいのか分からない-。

 一般企業ではコーポレートアイデンティティー(CI)活動がなじみの深いものになっている。簡単に言えば、企業の独自性や強みを統一して内外に発信することだ。企業価値には有形と無形の両方がある。例えば無形価値の指標で世界一のアップル社。私も手に取ったこともない商品をネット上でワンクリックするだけで購入した。リンゴのロゴには「アップル社が出すものなら間違いない」という力があるからだ。

 農家が自分で販路を開拓するには「旗印」が欠かせない。自分とは何か、自分たちの理念や社会的ミッション、誇りをどう伝えていくかが大切だ。経産省のグッドデザイン賞を受賞した十勝デザインファームプロジェクトで、野菜を首都圏に出荷するトラックのデザインを手がけたが、ダイコン農家さんが「消費者に安心を届ける生産者がいるということを知ってもらいたい」と話していたのが印象的だった。

 酪農家の牧場で手作りする乳製品のパッケージデザインの変更を依頼されたケースでは、従来のデザインは誰が作ったのか分からなかった。打ち出すべきは商品名ではない。一新したパッケージを見て「これはいける」と言ってもらったが、自信や生産意欲の向上にもデザインは役立つ。

 ブランディングとマーケティングは違う。誰に売るのかは大事だが、流行や数多く作る方向に流れてしまうこともある。デザインで思いを伝えるところから入れば、自信にもつながるはず。これからの時代、農業の現場は消費者にとって、「見えるもの」にならなければならない。

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