高品質なトマトを生産しようと、特殊なシートを土代わりに用いる「アイメック農法」に挑戦している吉田章記代表=唐津市石志の「Agrish」農場

■農薬大幅減、リコピン3倍

 特殊な素材を土壌の代わりに用いて高品質のトマトを栽培する「アイメック農法」に、唐津市の株式会社「Agrish(アグリッシュ)」(吉田章記代表)が県内で初めて挑戦している。素材は菌やウイルスを通さない特徴もあり、病害虫リスクや連作障害を避けて農薬使用量も大幅に減らすことが可能だ。初年度は収穫20トンで2千万円の売り上げを目指している。

 同社は同市石志の農地を借り受けて20アールのハウスを建設。温度や湿度、光合成に必要な二酸化炭素濃度などを測定し、常に生育に最適な状態にする環境制御システムを導入している。初期投資額は4千万円。県の補助金や日本政策金融公庫の融資を受けている。

 アイメック農法は大学発のベンチャー企業「メビオール」(神奈川県)が開発した高分子ゲル素材のシートを利用。養液土耕栽培の一種で、配管を通じて供給される水と養分を吸収したシートが土壌の役割を果たす。少量の培土のほかは土を必要とせず、水も少量で済むため、砂漠地方で実証実験が行われている。

 高糖度で濃醇なトマトができるのも特長で、慣行栽培と比較して2~3倍。うま味成分のグルタミン酸ナトリウムが約2・5倍、抗酸化作用があるとされるリコピンが約3倍となるデータもあり、先行する産地では機能性の高さから高単価で取引されている。

 同社は、中玉種の「フルティカ」を栽培。ハウスは完全に密閉し、入り口に防虫カーテンを設置するなど食品工場並みの衛生管理を保っている。病害虫リスクをさらに低減させる独自手法でさらなる高付加価値化を目指す考えで、「農業のイメージを大きく変えるためにも、誰もやらないことに挑戦したい」と吉田代表。近くインターネットの直販サイトを立ち上げて販路を開拓していくという。

 吉田代表にとって農業は初めての経験。福祉事業などのコンサルタント業務を手がけており、「高齢者や障害者が生きがいを持って経済的に自立するのに農業はハブ(結節点)になる」と確信し、自ら取り組む決意を固めた。

 半年研修した近隣の農家のアドバイスのほか、農業支援を専門とする企業と農場内に設置したカメラの映像や環境制御データを共有しており、遠隔で指導を受けられる体制になっている。吉田代表は「まずは成功のモデルケースを作って広げていきたい。雇用などでもふるさとに還元できれば」と話す。

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